最新記事

マイナス金利

三菱東京UFJの資格返上、マイナス金利封印観測を誘発

2016年6月9日(木)10時05分

 メガバンクから地方金融機関まで幅広く、マイナス金利への抵抗感が強い背景としてある大手銀関係者は、1)当座預金の一部へのマイナス金利が金融機関にはペナルティ的色彩が強い、2)長期金利のマイナスに代表されるイールドカーブ全体の低下で収益が圧迫されている、3)短期間でマイナス金利が終了する可能性が不透明──と指摘する。そのうえで「デフレ脱却のために貸し出しを増やそうという空気はない」と話す。

 振り返ってみると、三菱東京UFJフィナンシャル・グループの平野信行社長が今年4月、都内の講演でマイナス金利は「銀行業界にとって短期的には明らかにネガティブだ」と批判したのも、今回の決断への伏線だったのではないか、との声が金融界から出ている。

日銀はきっぱりと否定

 しかし、日銀内では、こうした見方をきっぱりと否定する声が圧倒的に多い。同行が離脱しても、国債市場や日銀オペへの影響はなく、むしろ国債から他のリスク資産へのポートフォリオリバランスが期待できるとの立場だ。

 そのうえで、今後も必要と判断すれば、金利、量、質の「3次元」でちゅうちょなく追加緩和を断行していくとのスタンスを強調している。

 また、ある大手銀幹部は、三菱UFJがPDから抜けても、応札義務に応じる分量が全体の88%から84%に低下するだけで「大騒ぎする必要はない」と断言。そのうえで「日銀の金融政策を制約することにならない。市場がそのように誤解するなら、日銀が動いてくる可能性が逆に高まる」と警戒感を示している。

 先の国内銀関係者は「直近では6月、7月の日銀金融政策決定会合における追加緩和期待は、かなり低下していた。しかし、三菱UFJ銀の決断を受け、再び関心が高まってきたのは間違いない」と述べている。

 (竹本能文 伊藤純夫 編集:田巻一彦)

[ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2016トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ECB、政策の柔軟性維持すべき 不確実性高い=独連

ワールド

韓国、対米通商交渉で作業部会立ち上げ 戦略立案へ

ビジネス

日経平均は反発、円安を好感 半導体株高も支え

ビジネス

村田製作所、マイクロ一次電池事業をマクセルに80億
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 7
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 9
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中