最新記事

フランス

「進撃の極右」が映し出すもの

2014年6月12日(木)13時55分
ポール・エイムズ

 バルスはテレビ番組に出演して、国民戦線の大躍進に絡めてフランスが「アイデンティティーの危機」に陥りつつあることを認めた。しかし、経済再建に必要な厳しい姿勢は崩さないと言い切った。

「国民に向かって嘘はつかない」と、バルスは語った。「努力する必要はないとか、フランスを苦しめている財政赤字や債務を減らさなくていいなどと言うつもりはない」

 社会党右派のバルスは、イギリスのトニー・ブレア元首相によくなぞらえられる。90年代にブレアとその仲間が、保守党のマーガレット・サッチャー首相(当時)から嘲笑され続けた労働党を変身させたように、バルスは現在の不人気を逆手に取って社会党を再生させるのではないかという声もある。

 しかしブレアの労働党は、長いこと野党だったおかげで「ニューレーバー(新しい労働党)」に生まれ変わる準備ができた。バルスはフランスを経済低迷から救い出し、国民戦線と闘いながら社会党を変えなくてはならない。

 しかもブレアは、伝統的な左派の政策が有権者離れを招いたとの認識に支えられていた。対してフランスでは、旧式の左派をまねてルペンが主張する保護主義や国家干渉といった政策を支持する国民が多い。

 フランスの中道右派も社会党よりましだとは言えない。UMPのジャンフランソワ・コペ党首は、国民戦線に敗れたことや、12年の大統領選に絡む党内の資金スキャンダルの責任を取って辞任した。

 国民戦線のルペンが出馬を宣言した17年大統領選まで、あと3年。分裂し、意気消沈しているフランスの主流政治家に残された時間はあまりない。

From GlobalPost.com特約

[2014年6月10日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロサンゼルスで移民の抗議活動、トランプ政権が州兵派

ワールド

コロンビア大統領選の候補者、銃撃される 容疑者逮捕

ビジネス

CPIや通商・財政政策に注目、最高値視野=今週の米

ワールド

マスク氏との関係終わった、民主に献金なら「深刻な結
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:韓国新大統領
特集:韓国新大統領
2025年6月10日号(6/ 3発売)

出直し大統領選を制する李在明。「政策なきポピュリスト」の多難な前途

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラドールに涙
  • 2
    ひとりで浴槽に...雷を怖れたハスキーが選んだ「安全な場所」に涙
  • 3
    猫に育てられたピットブルが「完全に猫化」...ネット騒然の「食パン座り」
  • 4
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 5
    救いがたいほど「時代錯誤」なロマンス映画...フロー…
  • 6
    プールサイドで食事中の女性の背後...忍び寄る「恐ろ…
  • 7
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「銀」の産出量が多い国はどこ?
  • 9
    ディズニーの大幅な人員削減に広がる「歓喜の声」...…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 3
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラドールに涙
  • 4
    猫に育てられたピットブルが「完全に猫化」...ネット…
  • 5
    ペットの居場所に服を置いたら「黄色い点々」がびっ…
  • 6
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 7
    日本の女子を追い込む、自分は「太り過ぎ」という歪…
  • 8
    ウクライナが「真珠湾攻撃」決行!ロシア国内に運び…
  • 9
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 10
    ひとりで浴槽に...雷を怖れたハスキーが選んだ「安全…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 7
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 8
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    猫に育てられたピットブルが「完全に猫化」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中