最新記事

事故

フェリー沈没事故を韓国はなぜ「恥」と感じるか

犠牲者への哀悼、当局への怒りに加えて「国の未熟さをさらした」という特有の感情がある

2014年5月13日(火)14時49分
ジェフリー・ケイン

子供が 泣き崩れる行方不明者の家族。乗客の大半は修学旅行中の高校生だった Issei Kato-Reuters

 先週、韓国南西部沖で起きた旅客船「セウォル号」の沈没事故は乗客・乗員476人のうち死者・行方不明が約300人に上っている。

 事故原因はまだ究明されていないが、乗員の過失による可能性も浮上。船が浸水するなか、船内放送では「その場を動くな」との指示が繰り返されたと、生存者たちは語っている。

 セウォル号は傾き始める直前に右に急旋回した。この無理な針路変更で座礁したか、または貨物が固定されていなかったためにバランスを崩した可能性もある。
 
 乗客の大半は高校生で、修学旅行で済州島に向かう途中だった。この惨事に国全体が悲しみに覆われ、行方不明者の安否に胸を痛めている。

 当然のことながら、乗員の責任を問う声が噴出。特に船長は、乗客を見捨てて真っ先に逃げたのではないかと非難されている。乗客の家族らが待機する体育館では、姿を見せた朴槿恵(パク・クネ)大統領に怒号を浴びせる人もいた。

 しかし他国で同様の悲劇が起きた場合とは異なり、多くの韓国人はこの件を単なる過失や当局の不手際による事故とは考えていない。韓国人は、あの沈没船に自分たちの国民性の欠点や国としての未熟さを見ている。

「たとえ乗員の不注意によるものでも、国民は韓国の恥と言うだろう」と、ソウル郊外で編集者として働く33歳の女性は言う。

 確かに、悲しみと嘆きとともに恥という感情は事故翌日のソウルで多く見られた。市内でコンビニを経営している年配男性は、「韓国人であることが恥ずかしい」と叫んだ。「これで先進国と言えるのか。政府の野郎どもなんか当てにできない」

 国内メディアも今回の惨事について、「混乱、軽率、救援の遅れなど典型的な途上国の対応だ」「韓国は人命を重んじない国だと国民は実感したに違いない」などと報じた。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

インドネシア中銀、追加利下げ余地ある=総裁

ビジネス

大・中規模企業の借り入れ需要改善幅、3年ぶり大きさ

ビジネス

NTT、4ー9月期の営業収益が過去最高更新 法人ビ

ビジネス

仏トタルエナジーズCEO、中国需要減速でも原油価格
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつかない現象を軍も警戒
  • 3
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に「非常識すぎる」要求...CAが取った行動が話題に
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 9
    「白人に見えない」と言われ続けた白人女性...外見と…
  • 10
    【HTV-X】7つのキーワードで知る、日本製新型宇宙ス…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中