最新記事

映画

「タイミング悪すぎ」...ディズニーを悩ませる、イスラエル人女戦士サブラの『キャプテン・アメリカ』参戦

The Trouble with Sabra

2023年11月24日(金)14時58分
ソフィー・ロイド

231128P54_ISH_02.jpg

サブラを演じるイスラエル出身のシラ・ハース ARTURO HOLMESーFILMMAGIC/GETTY IMAGES

「平和の使者」に変身?

本誌はマーベル・スタジオにコメントを求めたが、回答はなかった。

昨年サブラの登場に対してバッシングが起きると、同社は声明で次のように述べた。「われわれのキャラクターと物語はコミックに着想を得ているが、映画化の際は現在の観客に合わせて創造し直す。サブラについても新しいアプローチを取っている」

サブラに関しても、イスラエル・パレスチナ間の根強い対立に関しても、コミックの描写は細やかさを欠いていた。

イスラエルの漫画家ハガイ・ギラーがタイムズ・オブ・イスラエル紙で、「マーベルはろくに調べず、イスラエルをステレオタイプに描いた」と批判したとおりだ。

サブラは初登場回でハルクがアラブの武装組織を支援していると誤解し、彼を攻撃する。やがてパレスチナ人の少年が彼らの戦闘に巻き込まれて死亡。

ハルクは「この子が死んだのは、彼の民族とおまえの民族が土地を奪い合うからだ。おまえたちが分かち合わないせいでこの子は死んだのだ」と、サブラに説教する。

この一件で慈悲に目覚めたかに見えたサブラだが改心は長続きせず、その後もアラブ系のキャラクターに対する色眼鏡は変わらなかった。

95年のコミック『ニュー・ウォーリアーズ』ではパレスチナ人を恨む動機の説明として、幼い息子をテロで殺された過去が付け加えられた。

マーベルの単細胞な愛国主義は1941年のキャプテン・アメリカ誕生までさかのぼる。だがキャプテンはその後コミックでも映画でも何度も自分の正義を疑い、見つめ直した。マーベルもコミックを映画化する際は、世論や政治の変化に合わせてキャラクターをアップデートした。

例えば60年代の冷戦下に登場したレッド・ガーディアン。キャプテン・アメリカに対抗してソ連が生み出した超人兵士だが、2021年の『ブラック・ウィドウ』ではデビッド・ハーバーが初老のレッド・ガーディアンを哀愁を交えて演じ、笑いを誘った。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

英シュローダー、第1四半期は98億ドル流出 中国合

ビジネス

見通し実現なら利上げ、米関税次第でシナリオは変化=

ビジネス

インタビュー:高付加価値なら米関税を克服可能、農水

ビジネス

日銀、政策金利を現状維持:識者はこうみる
あわせて読みたい

RANKING

  • 1

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 2

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 3

    タンポンに有害物質が含まれている...鉛やヒ素を研究…

  • 4

    人肉食の被害者になる寸前に脱出した少年、14年ぶり…

  • 5

    「SNSで話題の足裏パッドで毒素は除去されない」と専…

  • 1

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 2

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 3

    人肉食の被害者になる寸前に脱出した少年、14年ぶり…

  • 4

    「SNSで話題の足裏パッドで毒素は除去されない」と専…

  • 5

    アメリカ日本食ブームの立役者、ロッキー青木の財産…

  • 1

    アメリカ日本食ブームの立役者、ロッキー青木の財産…

  • 2

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 3

    「どちらが王妃?」...カミラ王妃の妹が「そっくり過…

  • 4

    人肉食の被害者になる寸前に脱出した少年、14年ぶり…

  • 5

    「SNSで話題の足裏パッドで毒素は除去されない」と専…

MAGAZINE

LATEST ISSUE

特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門

特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門

2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語