最新記事

音楽

女性アーティストたちに多大な影響を与えてきた「オルタナの女王」の帰還

Back in the Game

2021年07月01日(木)18時13分
デービッド・チウ

210706P62Perez1993_LIZ_01.jpg

1993年のライブ MARTY PEREZ

シングルが先行リリースされた1曲目の「スパニッシュ・ドアーズ」は、メランコリックだがアップテンポなサウンドで別れを表現する。「長年のパートナーから別れを告げられたレストランに行くの。『どうすればいい? あなたがいない世界でどうやって生きていけばいい?』」

フェアのルーツであるシカゴに敬意を表した「シェリダン・ロード」など、自身を振り返る場面もある。

「シェリダン・ロードはシカゴの北郊と、より多文化で危険で刺激的で、競争の激しい世界である市街地をつなぐ大動脈。つまり、ある心の状態から──守られているような、無邪気なような、閉じ込められているような、とにかく外に出たいという気持ちから、レイクショア・ドライブに出ると、何者でもない自分の可能性が無限に広がっているという感覚になる」

11年ぶりとなる今回の新作までスタジオアルバムのリリースは中断していた。しかしここ3年は、デビューアルバム25周年を記念したリマスター版の『ガーリー・サウンド・トゥ・ガイビル』や回顧録の『ホラー・ストーリーズ』によって、フェアのキャリアは新たな評価を得ている。

さらに彼女のDIY的なアプローチは、スネイル・メイルやサッカー・マミーなどインディーの新世代の女性アーティストの音楽に受け継がれている。

チャンスを逃したくなかった

「私がこれほど情熱的に制作を再開したいと思った理由の1つは、私が理解できて、共感できて、親近感を覚える若い女性が今はたくさんいるから。音楽の世界に女性がこんなに増えて、この瞬間に加わる機会を逃したくなかった」

『ガイビル』の時代から世の中はずいぶん変わったと、フェアは感じている。「ライブやフェスのラインアップの中心になる女性アーティストは、明らかに増えている。(スタジオを使わない)ホームレコーディング技術のおかげで、多くの若いアーティストがレーベルとの契約を待たずに、自分の音楽を自分で発表できるようになった」

「さらにソーシャルメディアのおかげで、新しい世代が自分のキャリアに主体性を持てるようになった。このまま自分のアルゴリズムに没頭して、孤立して離れ離れになるかもしれないけれど、それは誰にも分からない。とにかくチャンスは逃したくない」

現在は8月12日から始まるモリセットとガービッジとのツアーの準備を進めている。次のアルバムの構想も練り始めているようだ。

「自分では見えている。回顧録と、(今回と次回の)2枚のアルバムは、私のキャリアの一場面としてデザインしたようなもの。このまま全てが前に進んで、次のレコードもすぐ世に出てほしい」

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ファーウェイ、チップ製造・コンピューティングパワー

ビジネス

中国がグーグルへの独禁法調査打ち切り、FT報道

ビジネス

ノボ、アルツハイマー病薬試験は「宝くじ」のようなも

ワールド

林氏が政策公表、物価上昇緩やかにし1%程度の実質賃
あわせて読みたい

RANKING

  • 1

    エリザベス女王が「誰にも言えなかった」...メーガン…

  • 2

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 3

    「結婚に反対」だった?...カミラ夫人とエリザベス女…

  • 4

    ハリウッド大注目の映画監督「HIKARI」とは? 「アイ…

  • 5

    カミラ王妃が「メーガン妃の結婚」について語ったこ…

  • 1

    「高慢な態度に失望」...エリザベス女王とヘンリー王…

  • 2

    「結婚に反対」だった?...カミラ夫人とエリザベス女…

  • 3

    エリザベス女王が「誰にも言えなかった」...メーガン…

  • 4

    やはり「泣かせた」のはキャサリン妃でなく、メーガ…

  • 5

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 1

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 2

    女性の胎内で育てる必要はなくなる? ロボットが胚…

  • 3

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 4

    アメリカ日本食ブームの立役者、ロッキー青木の財産…

  • 5

    「結婚に反対」だった?...カミラ夫人とエリザベス女…

MAGAZINE

LATEST ISSUE

特集:世界が尊敬する日本の小説36

特集:世界が尊敬する日本の小説36

2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは