最新記事

日本文学

英語でよみがえる異色の女優・作家、鈴木いづみ伝説

A Woman of Love & Language

2021年02月24日(水)18時00分
ジェームズ・クラウリー

英語版の表紙には鈴木の写真が使われた COURTESY PENGUIN RANDOM HOUSE

<70~80年代の日本を駆け抜けた日本の女性作家の短編集が世界へ>

戦後の日本が最も輝いていた時代に、その暗部を全速力で駆け抜けた女優・作家の鈴木いづみ。死後35年を経て、その短編集『ぜったい退屈』が初めて英訳出版される。

版元はバーソ・ブックスで、刊行予定は2021年4月。翌年には第2弾『ラブ<デス』が続く。英訳を担当するのは山崎ナオコーラの翻訳者ポリー・バートンや、古川日出男や川上未映子を手掛けるデービッド・ボイドらだ。

これだけの力を持つ作家が今まで英語で紹介されずにきたのは不思議だと、バーソのフィクション部門編集長キアン・マコートは言う。

『ぜったい退屈』に収められた7つの物語はいずれも70~80代に書かれたものだが、ジェンダーの悩みやテクノロジー依存といった現代のSF小説に通じるテーマを扱っている。その作品世界はダークでパンク、ファンタジーでありながら、男と女の、そして社会の底辺の苛酷な現実に深く根差している。

アングラ文化のヒロイン

例えば「女と女の世の中」は、題名どおり女ばかりのユートピアに「特殊居住区」という名のゲットー出身の少年が紛れ込み、秩序を破壊する物語。表題作の「ぜったい退屈」は労働が機械化され、若者たちが不満をくすぶらせる東京が舞台だ。

日本でもメジャーとは言えない鈴木の存在にマコートが気付いたのは、ある友人のおかげだ。「大学院で論文を書いていた友人が、たまたま彼女の作品を送ってきた。それで翻訳者に読んでもらったら『言葉遊びはガートルード・スタインを思わせる』という評価が返ってきて、こいつはいけるぞと思った」

鈴木いづみは1949年に生まれ、女優やモデルをしていた。若松孝二監督のピンク映画や寺山修司の作品に出演して注目されてアングラ文化のヒロインとなり、ジャズミュージシャンの阿部薫と結婚して一女をもうけるも、離婚。70年に作家としてデビューしたが、SF的な作風を確立したのは薬物の過剰摂取で阿部が死去してからのことだ。2人の壮絶な生きざまは若松監督の映画『エンドレス・ワルツ』にも描かれている。1986年、自死。36歳だった。

[2020年9月29日号掲載]

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米、イランで不明の戦闘機乗員救出 トランプ氏「史上

ワールド

イラク南部の巨大油田に攻撃、3人負傷 イラン国境に

ワールド

米、イラン元司令官親族の永住権停止 移民当局の拘束

ワールド

ウクライナとトルコ首脳が会談、安保協力強化で合意
あわせて読みたい

RANKING

  • 1

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 2

    24歳年上の富豪と結婚してメラニアが得たものと失っ…

  • 3

    タブーを覆した65歳 「真の自由な女性」ブリジット…

  • 4

    エリザベス女王が「リリベット」に悲しみ、人生で最…

  • 5

    人肉食の被害者になる寸前に脱出した少年、14年ぶり…

  • 1

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 2

    24歳年上の富豪と結婚してメラニアが得たものと失っ…

  • 3

    人肉食の被害者になる寸前に脱出した少年、14年ぶり…

  • 4

    タブーを覆した65歳 「真の自由な女性」ブリジット…

  • 5

    「見せたら駄目」──なぜ女性の「バストトップ」を社…

  • 1

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 2

    24歳年上の富豪と結婚してメラニアが得たものと失っ…

  • 3

    「自由すぎる王族」レディ・アメリア・ウィンザーが「…

  • 4

    人肉食の被害者になる寸前に脱出した少年、14年ぶり…

  • 5

    セレブたちがハロウィンに見せた本気コスプレ、誰が…

MAGAZINE

LATEST ISSUE

特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準

特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準

2026年4月 7日号(3/31発売)

国際基準の情報開示や多様な認証制度──本当の「持続可能性」が問われる時代へ