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はじけ切れなかったジョーカーの「元カノ」

Not So Fantabulous

2020年03月26日(木)17時40分
サム・アダムズ

ハーレイは仲間との友情を武器に戦いに挑む ©2020 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED TM&©DC COMICS

<かわいいヴィランと暗黒街のボスの戦いを描く『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒』には何かが足りない......>

キャシー・ヤン監督の『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』の主人公は、DCコミックスに登場する女性ヴィラン(悪役)のハーレイ・クイン。ジョーカーの元恋人だ。

物語は、ハーレイ(マーゴット・ロビー)がジョーカーとひどい別れ方をしてへこんでいるところから始まる。本作ではジョーカーは、冒頭の漫画風場面と、彼女がナイフ投げの練習の標的にしている似顔絵を除けば、ほとんど登場しない。しかし物語は、彼の色濃い影から逃れて「覚醒」するハーレイを描こうとするものだ。

アメコミの映画化だからといって、酷薄な表情の悪者や雨にぬれた暗い街の情景を期待すると拍子抜けするかもしれない。本作で描かれるゴッサム・シティは、犯罪組織のボスであるローマン・シオニス(ユアン・マクレガー)の支配下にある。シオニスはベルベットの上着と、生きたまま敵の皮を剝ぐ残虐行為がお気に入りという悪者だ。

ゴッサム・シティの人間全てが主人公の敵というわけではない。それでもハーレイがジョーカーと別れたという噂が広まると敵がそこかしこから顔を出すようになる。新たな敵が登場するたび、画面には彼女を追う理由が表示されるのだが、怒るのも無理はないと納得させられるものがほとんど。やっぱりハーレイもそれなりのワルなのだ。

初登場シーンではチーズクリームを泣きながらやけ食いしていたハーレイだが、戦いのシーンではそんなだらしない姿は見せない。特に、振り回すのに手頃な重たい物を手にすれば安定の戦いぶりだ。

16年の映画『スーサイド・スクワッド』に登場したときのハーレイの武器はお色気だった。だが本作では、強烈な自衛本能と友情だ。

ダークな描写はいまいち

ハーレイは歌手で力持ちのブラック・キャナリーやクロスボウの名手ハントレス、使命感に燃える刑事のレニー・モントーヤ、それにスリの少女カサンドラ・ケインと仲間になる。彼女たちとの絆は、たわいもないことから生まれる。完璧な朝食のサンドイッチへのこだわりや、けんかの真っ最中に髪を結んでやったこととか......。

仲間たちはそれぞれ、男からひどい目に遭わされた過去を持っているが、全ての男性が悪者として描かれるわけではない。もっとも、女性キャラ中心のDCコミックスの映画化など認めないという人はそう感じるかもしれないが。

『スーサイド・スクワッド』を思わせる、ダークでわざとらしい描写は時に興ざめだ。若い女の子が殺される場面には乾いたユーモアがちりばめられ、ローマンは女性の洋服を剝いでテーブルの上で踊らせ、辱めようとする。

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