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遺体を堆肥化する「エコロジカル埋葬」 土葬も火葬もしない第3の方法とは?

2020年01月16日(木)19時25分
岩澤里美(スイス在住ジャーナリスト)

News Direct/YouTube

<「自分が亡くなったら体を肥料にできるはずだ」という思いが「プロメッション」開発のきっかけ。従来の土葬に変わる、エコロジカルな方法で環境負担を減らす構想>

遺体を肥料化 米国15州で啓蒙

日本では火葬が一般的だ。一方、アメリカでは土葬も多く、全米葬儀ディレクター協会(NFDA)のレポートによると2019年は土葬が39%を占めたが、土葬が減り火葬が増える傾向は今後も続くと予想されている。土葬も火葬も、どちらも環境にやさしい方法とはいえない。エンバーミング(遺体の防腐処理)の薬剤が地下水を汚染したり、多量の燃料を使ったりして、環境に何らかの影響を与えている。また、墓不足という問題もある。

そこで、土葬も火葬もしない別の埋葬方法が考えられ、実用化が目指されている。その方法とは、遺体を液体窒素に浸して凍結し、フリーズドライしてから土の浅い部分に埋めるメソッドだ。「プロメッション」(下記参照)と名付けられたこの方法について、いま、アメリカの15州で5人のメンバーが人々に紹介しつつ、当局と実用化への交渉を進めている。

「プロメッション」の手順 (特許と商標を取得済み)

1.病院や葬儀所で、遺体をマイナス18度で凍らせる。
2.3日ほどして、プロメッション施設へ。遺体を木製の棺に寝かせ、装置の中へ入れる。装置内で遺体と棺が別々になり、遺体をマイナス196度の液体窒素に浸して凍らせる。
3.遺体と棺を振動させると、粗い粉になる。
4.この粉をフリーズドライ機にかけて、水分を抜く。
5.歯の詰め物や手術で体内に入れた金属を、金属セパレーターを使って除く。
6.おおよそ体重の30%になった粉末(水分以外のすべての物質)を、骨壺よりも大きい生分解性の棺に入れる。
7.土の浅い部分(深さ30~50センチメートル)に埋める。
8.土の状態にもよるが、湿気が棺に入り、土中微生物の働きにより約1年で腐植土になる。


2019年12月初めには、メンバーの1人のレイチェル・カルドウェルさんが、カンザスシティのニュース番組に登場 https://youtu.be/FaiHkwigTkU した。カルドウェルさんは「プロメッションだと、(遺体が堆肥化して土にかえり)人生の輪を結ぶことができます」と話す。カンザス州当局は、プロメッションは火葬の定義には当てはまらないため、いまのところは実施できないと申し渡している。が、同番組によると、将来、法改正が検討される可能性はゼロではないようだ。

カルドウェルさんは、以前は葬儀社で働いていた。ここ数年、より環境に配慮した埋葬にできたらという遺族たちの希望が増えたという。そこで、何かよい方法はないかと探し、「プロメッション」を知った。

【参考記事】犬でも猫でもげっ歯類でもOK ペットのフリーズドライを請け負う業者を訪ねた

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