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傷心のセレーナ・ウィリアムズを癒やした、大坂なおみとの文通

2019年07月22日(月)18時00分
ニューズウィーク日本版編集部

SUSAN MULLANEーUSA TODAY SPORTSーREUTERS (OSAKA)

<全米オープンの一連の騒動で、セラピーに通うほど悩んでいたウィリアムズだったが、今回の全英オープンで決勝に進出。彼女の心を癒やしたのは、専門家の治療よりも大坂からの返信だったかもしれない>


 

こんにちは、ナオミ!

セリーナ・ウィリアムズです。コートで言ったように、あなたをとても誇りに思っています、そして本当に申し訳ありません。私は自分のこだわりが正しいことだと考えていました。でも、メディアが私たちを互いにいがみ合うような形にするとは思っていませんでした。もう一度、あの瞬間に戻れるならやり直したい思いでいっぱいです。あの時も今もあなたが好きだし、あなたを支持しています。

私は決してほかの女性、特にほかの黒人女性アスリートから光を奪うことを望みません。あなたの輝かしい未来を待ち望んでいます。そして、信じてほしい。いつも大ファンとしてあなたを見ているの! あなたの現在と未来の成功だけを願っています。もう一度言います。あなたをとても誇りに思っています。すべての愛を込めて。

あなたのファン、セリーナより。

昨年9月の全米オープンテニス女子決勝戦で、セリーナ・ウィリアムズが試合中に審判に厳しい抗議を繰り返し、ラケットをへし折り、3度の警告を受け大坂なおみにグランドスラム(4大大会シングルス)初優勝を許したのは記憶に新しい。

人種や女性に対する差別と戦ってきたと自負するウィリアムズが、審判から「ズルをした」と指摘され、激怒したことが物議を醸した。ブーイングの嵐になった表彰式で、大坂が涙をサンバイザーで隠す姿を見るのは、彼女のファンにとっても、ウィリアムズのファンにとっても後味の悪いものだった。

もちろん、一番後味の悪い思いをしたのはウィリアムズだったろう。不快感から解放されるため、試合後しばらくしてから ウィリアムズは大坂にメールを送った。このほどファッション誌ハーパーズ・バザーに寄稿したエッセーの中で、彼女は「私からゲームが奪われただけでなく、決定的な勝利の瞬間がもう1人の選手から奪われた。彼女の長い、成功に満ちたキャリアの中でも最も幸福な思い出として記憶されるべき瞬間だったのに」と書いた。そして、大坂に宛てた手紙(上)を公開した。

セラピーに通うほど悩んでいたウィリアムズだったが、今回の全英オープンで決勝に進出し、復調の兆しを見せた。彼女の心を癒やしたのは、専門家の治療よりも大坂からの返信だったかもしれない。

「人は怒りと強さを誤解することがある。その2つの区別がつかないから」「あなたのように自分自身のために立ち上がった人はいない。あなたはずっと先駆者でいて」

グランドスラム決勝での2人の再戦をファンは何より望んでいる。


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[2019年7月23日号掲載]

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