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海外移住「キャリアアップ」のリアル──日本人女性の挑戦2.0

2018年11月16日(金)14時40分

シンガポールで起業の挑戦

米岡の起業は、アイデアがまだ明確ではないところからスタートした。

まず、起業をしたいという情熱があれば、まだアイデアがなくても入れるプログラムに参加。4カ月間でベンチャーキャピタリストなどの前でピッチ(投資家へのプレゼンテーション)を毎回パスし、1カ月後にはアイデアをまとめないと最終的に通過できない。このプログラムを通じて、起業の構想を練った。

そこで米岡が考案した起業のアイデアが、「子どもの写真を手間なく整理し、家族内だけで共有できるようにするサービス」だった。

「自分自身、赤ちゃんの頃のアルバムを見るのが好きで。小さな頃、親が愛情を捧げてくれていたことが、自分のアイデンテティーの一部になっていました。けれど、現代のお母さんの話を聞くと、写真が大量にありすぎて整理できず、子どものアルバムを作っていない人が多く、ショックを受けたんです」

はじめは手作業で写真を選びアルバムを仕上げて渡すサービスを行った。その後、ユーザーのニーズを試行錯誤しながら調査した結果、最終的な形としてiOSアプリになった。しかし、マーケティング活動を本格的に始めようとした矢先、重要なシステムの問題の解決が困難なことが判明。サービスを閉めることになってしまった。

「起業して、失敗したことにまったく後悔はしていません。今後テクノロジーが高度化し、必要なスキルはどんどん変わっていく。そこで、『私はサバイバルしていける』。この経験を通して、そんな自信がつきました」

起業失敗後、フィンテック業界でキャリアをスタート

その後、米岡は心機一転、新しいことをしようと考える。

日本で金融に携わり、シンガポールで起業をした経験を活かし、次の着地点としてフィンテック(ITを活用した金融サービス)に興味を持った。だが、その頃はフィンテックに関する専門性はなかったため、業界のイベントの手伝いなどに参加し、地道に知識を増やしていった。

そんなとき、以前コワーキングスペースで顔見知りだったフィンテックスタートアップ「Moneythor」と再び関わる機会があり、日本進出の責任者として働くことになる。自分で起業・事業失敗を経験した後に、他のスタートアップで働くことで、「2倍・3倍学び、吸収できる」と米岡はいう。

「「Moneythor」は創業者たちの自己資金で運営、早い段階で黒字化をし、チームもむやみに拡大しようとしない。堅実にやっていくことも大切な方法だと、痛感しています」

トライ&エラーをし続け、今後も学んでいく

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Moneythorの同僚と、シンガポールで開催されたフィンテック業界のカンフェレンスにて。(Photo: Waki Yoneoka)

米岡は、今後も失敗を恐れずにトライ&エラーをして成長し続けていきたいと語る。

「今の私は人生において、自分が世の中の人のためにどんな役に立つものを残せるか追及する時期だと考えています。そして、日本にいるよりも海外のほうが世間体を気にせず、失敗を恐れないというところはある。だからこそ、『とりあえずやってみて、失敗してみてもいいや!』という精神で、今後も挑んでいきたいです」


モンルワ幸希
一橋大学卒業後、日本の公的研究機関に勤務。2012年よりパリの法律事務所を経て、2015年よりジュネーブの国連専門機関・世界知的所有権機関に勤務。著作権・クリエイティブ産業部所属。パリ第二大学及びパリ政治学院修士号(国際私法、知的財産権法)。カリフォルニア大学及びジュネーブ大学学位。

米岡和希
不動産投資会社、KPMGでのコンサル部門勤務を経て、シンガポールに移る。INSEADでMBA取得。写真保存・共有サービス「Memom」を起業。現在、金融機関のデジタルチャンネルの顧客体験改善を支援するフィンテック「Money thor」の日本事業開発責任者を務める。

ayananishikawa-01.jpg[執筆者]
西川彩奈
フランス在住ジャーナリスト。1988年、大阪生まれ。2014年よりフランスを拠点に、欧州社会のレポートやインタビュー記事の執筆活動に携わる。過去には、アラブ首長国連邦とイタリアに在住した経験があり、中東、欧州の各地を旅して現地社会への知見を深めることが趣味。女性のキャリアなどについて、女性誌『コスモポリタン』などに寄稿。パリ政治学院の生徒が運営する難民支援グループに所属し、ヨーロッパの難民問題に関する取材プロジェクトなども行う。日仏プレス協会(Association de Presse France-Japon)のメンバー。
Ayana.nishikawa@gmail.com

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