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サウジアラビア

配車アプリは女性運転手2000人を採用 女性の運転解禁後のサウジアラビアで起きていること

2018年09月18日(火)16時00分
西川彩奈(フランス在住ジャーナリスト)

今年末に免許取得予定のマリアム・モッサリ。紅海に面する海岸沿いをドライブするのが、今から楽しみだと話す Photo:Lina Mohammed

<サウジアラビアで、今年6月24日に女性の運転が解禁された。2カ月を経た今、国内では着実に変化が表れはじめているようだ。今後、同国はどのように発展するのだろうか? 現地の声を聞いてみた>

世界で唯一女性に運転を禁止していた国、サウジアラビアで車の運転を認める法律が施行されてから、はや2カ月が過ぎた。

解禁された当日は、女性がハンドルを握った車がジッダやリヤドの街を走り、歓喜の声に包まれたと地元メディアが報道したことは、記憶に新しい。

ジッダを拠点にラグジュアリー・コンサルティング会社「Niche Arabia」を運営するマリアム・モッサリは「歴史的瞬間の証人になったという高揚感、やっと女性の権利が達成されたという喜びを感じていた」と、当時を振り返る。

そして彼女は、今の心境をこう語る。

「2カ月が経って、これはただの始まりに過ぎないと感じている。国全体、特に女性たちが男女平等への誓いを新たにした。今のサウジには期待感が溢れている」

女性の運転解禁は、石油依存からの脱却と社会の活力を高めることを目指し、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子(33)が指揮を執って進める経済・社会改革プラン「ビジョン2030」の一環だ。女性の社会進出による経済の活性化などを目的としている。

コンサルティング会社「PwC」の報告によると、2020年までの約1年半の間に、サウジアラビアでは300万人の女性が車の免許を取得すると予測している。

これだけ短期間で多くの女性が車の運転をし始めると、同国は今後どのように変わっていくのだろうか? 現地の声を取材した。

王族と手を取り合ってこそ達成する「女性の未来」。サウジ流フェミニズム

実際にサウジアラビアの女性は、この2か月間の変化をどのように感じているのだろうか? 出張先のパリコレから帰国後に教習所に通うという前述のマリアムは、「時が経つにつれ、女性が運転する車をよく道で見かけるようになり、私の周囲の女性たちも、運転して仕事に行くようになった。サウジ女性の定番の遅刻の言い訳だった『運転手が遅れたせいで遅刻しました』も、もうすぐ使えなくなる」と、冗談交じりに語る。

しかし、女性の運転が社会に浸透していく一方で忘れてはいけないのが、「権利」を求めて拘束された女性活動家たちの存在だ。

【参考記事】サウジアラビアで女性の運転が解禁 一方で権利獲得の活動家は獄中に

人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチによると今年の5月以降、女性人権活動家が10人以上拘束されている。彼女たちは過去に「女性の運転の権利」や、次に廃止すべきと考える「男性後継人制度(父親や兄弟の許可なく、海外旅行などができない制度)」に対する抗議をしていた。現在、まだ刑務所に収容されている人も複数いるという。つい最近では、7月後半にも同様に女性活動家が2人逮捕された。

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