90年代ゲームの「達成感」はどこへ行ったのか──課金と依存でプレーヤーを支配する「現代ゲーム」の罪深さ
Games and Brains
90年代のゲームは子供同士の交流を促し、思考力を育んだものだが MARK PETERSONーCORBIS/GETTY IMAGES
<現代のゲームは、かつての「遊び」とは別物になりつつある。無料をうたいながら課金を促し、終わりのない設計でプレーヤーを引き留める。専門家は、「プレーヤーを追跡し、搾取し、依存させる目的で設計されたゲームがあまりに多い」と警告する>
▼目次
「今のゲーム」では批判的思考力が育たない...「攻略法をググるな」
1990年代に子供時代を過ごした人はきっと覚えているだろう。『マリオカート』の最終サーキットを爆走するスリルや、『ポケットモンスター 赤』の秘密を攻略本なしで解いたときの驚きを。
あの頃のゲームはカートリッジやCD-ROMの形だった。ゲームをクリアできず途中でゲームオーバーになれば、プレーヤーは最初からやり直して腕を磨くしかなかった。
一方、今の子供は『フォートナイト』のバトルパスを買い、『ロブロックス』で「スキン」と呼ばれるコスチュームやアイテムに課金し、「期間限定イベント」を知らせる通知の嵐にさらされる。
心理的影響は大きい。ゲームの変容は子供の脳の発達や試練との向き合い方を根本から変えたと、専門家はみる。
フロリダ州のメンタルヘルスカウンセラー、ベロニカ・リキテンスタインは、90年代にゲームをクリアしたときの「本物の勝利の手応え」を今も覚えている。
「クリアするにはステージをいくつも突破しなければならなかったから、難しいプロジェクトを成功させたときのように達成感が持続した」
今はゲームの構造が違うとリキテンスタインは説明する。「無料」のうたい文句は往々にしてこのスキンに5ドル、単調なタスクの短縮に10ドルといった課金への入り口だ。ゲームはプレーヤーに軽度のストレスを与え、解決策として課金を選ばせるようにできている。プレーヤーの行動をモニタリングし、絶妙なタイミングで「特別オファー」を出す。
「そうやって依存のループをつくっている」と、リキテンスタインは言う。「はっきりした終わりがないから、やめる踏ん切りがつかない」





