二宮和也×監督対談『ラーゲリより愛を込めて』 瀬々敬久「二宮くんからお願いされたこと」

HOPE, BONDING AND LOVE

2022年12月14日(水)11時15分
大橋 希(本誌記者)

magSR20221214filmtalk-6.jpg

©2022映画「ラーゲリより愛を込めて」製作委員会 ©1989 清水香子

――原作から映画化するに当たって、メッセージとして一番残さなくてはいけないと思ったところは?

瀬々 これは過去の出来事ですよ、はい、ちゃんちゃんっていう感じにはしたくなかった。人間が生きている限り、震災でもコロナ禍でも、いろんな悲劇や不幸は常に起こり続けるわけですよね。その時にこの映画や山本さんのことを思い出して、何かを考えるきっかけになるようにしたいと思ったところはある。

現在にもつながる話というか、今の時代におけるこの映画の意味を問い続けながら作りました。

――二宮さんは少し斜に構えた役が多い気がしますが、今回の山本役はやりにくくなかった?

二宮 それはシンプルに、演じる上でのニュアンスの違いと言いますか......。山本さんを演じるに当たっての根幹は何かというと、「生きたい」というより「死にたくない」という思いが誰よりも強くあること。それは毎日、一回は頭の中で言いながら現場に入っていました。

「ダモイ(帰国)できる日が絶対に来るから。頑張って生きるんだ」ってみんなに言うけど、自分は生きたいっていうより、死にたくない。その違いは常に意識して、生死に関してはネガティブなほうにも取れる感情でいようと思っていました。

人間の卑怯なところというか、この人も人間なんだなっていうふうに感じたいと思っていたので、そこは大事にしましたね。

――シベリアにいたおじいさんへの思いもありながら演じていた?

二宮 そこは、あまり意識しなかったです。とにかく、興行とは矛盾してしまうのですが、より多くの方々に見ていただきたいのと同時に「もう一回見たくなる映画じゃなきゃいいな」とも思っていました。一回見て、もう見なくていい、こんな悲惨な記憶はもういいと、そっとふたを閉めてもらえれば、と。そういう気概はありましたね。

でも無力感というか、作品を仕上げている最中に(ウクライナ)戦争が起きたし、「僕らは何をやっているんだろう。エンタメというのは一体なんなんだろう」と考えさせられることはありました。

瀬々 山本さんは当時としては変人だったと思うんですよ。あの時代にああいうことやってるっていうのは、どっちかっていうと変人。だから二宮くん、結構やりやすかったんじゃないの?

二宮 (松坂演じる)松田も最初に言ってますもんね。「この人には狂気を感じた」と。

瀬々 それで思い出したけど、みんなで水浴びするシーンがあるじゃないですか。二宮くん、その現場でぼそっと、「ああ、こんな楽しい時もあったんだなー」って言ってたよね。

二宮 言ってましたね。

瀬々 やっぱり山本さんって、ああいうところでエンタメを与え続けた男だったんだと思う。僕も震災の避難所に取材に行ったことがあるんだけど、避難所でだってみんないつも苦しい顔をしているわけじゃないんですよ。喜びや出会いもあって、別れもあって、楽しく笑ったりすることもある。それが人生なんでね。

そういうことをやり続けようとした人が山本さんだった気がして。そういう意味では二宮くんとイコールな感じもします。

構成・大橋 希(本誌記者)

20221213issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2022年12月13日号(12月6日発売)は「ラーゲリより愛を込めて」特集。主演・二宮和也×監督・瀬々敬久。映画『ラーゲリより愛を込めて』で知るシベリア抑留の歴史

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア、黒海の石油施設に被害 ウクライナが無人機攻

ビジネス

中東戦争でインフレ加速・成長鈍化の恐れ、世界成長の

ワールド

トランプ氏、日本など名指しで非難 対イラン軍事作戦

ワールド

トランプ氏、イラン「一夜で壊滅」も 7日までの合意
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの大誤算
特集:トランプの大誤算
2026年4月14日号(4/ 7発売)

国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐせ・ワースト1
  • 3
    【銘柄】イラン情勢で一躍脚光の「NEC」 防衛・宇宙の2大テーマでAI懸念を払拭できるか
  • 4
    地面にくねくねと伸びる「奇妙な筋」の正体は? 飛行…
  • 5
    トランプ、イランに合意期限「米東部時間6日午前10時…
  • 6
    「高市しぐさ」の問題は「媚び」だけか?...異形の「…
  • 7
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始め…
  • 8
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 9
    人口減の自治体を救う「小さな浄水場」──誰もが常に…
  • 10
    認知症検査をすり抜ける? 「物忘れ」よりも早く現れ…
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 3
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始めた限界
  • 4
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐ…
  • 5
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 6
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 7
    【銘柄】イラン情勢で一躍脚光の「NEC」 防衛・宇宙…
  • 8
    中国がイラン戦争最大の被害者? 習近平の誤った経…
  • 9
    「高市しぐさ」の問題は「媚び」だけか?...異形の「…
  • 10
    年金は何歳からもらうのが得? 男女で違う「最適な受…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 5
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの…
  • 6
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 7
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中