日本の仕事と生活の現場から「孤立」をなくす、通信インフラ「第三の道」
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北海道の牛舎「有限会社ドリームヒル」にもPLCアダプターが導入されている(パナソニック株式会社ライフソリューションズ社提供)
<Wi-Fiが届かない、LAN工事ができないなどの理由で通信が届かない場所は、日本にもまだ数多く残されている。そうした現場に通信を届けることで、労働環境や生活環境を大きく向上させる「PLC」に注目と期待が集まっている>
巨大な工場から伝統的な日本旅館、大規模な農場、長距離のトンネル、海上を航行中の船の内部まで──。これまで通信環境の整備に課題があった多様な場面で、問題を解決する新たな技術に注目が集まっている。電力線に、電力と異なる周波数のデータ信号をのせることで、電力線を通信回線として利用できる技術のPLC(Power Line Communication)だ。
最近では、その高速版であるHD-PLC™(※)が、通信回線を引くのが難しいシーンで多く利用されるようになった。配電というインフラを「配電情報インフラ」へと進化させ、さらには日本が直面する労働人口の減少という社会的な課題に対する解決策のひとつにもなり得るHD-PLCの、現状と将来的な可能性を探った。
※パナソニックが提唱する高速電力線通信方式の名称で、日本およびその他の国での登録商標もしくは商標になっている。
そもそもPLCとは何なのか?
もともとPLCは、電話線がなく電力線だけ引かれている過疎地域や山岳地域などで、音声通信が利用できるように開発された技術だったとされる。すぐに広く普及することはなかったが、2001年に日本政府が掲げた日本型のIT社会を目指すe-Japan戦略などもあって、その注目度は増していった。
10-450kHzの周波数を用いるものを低速PLC、2-30MHzの周波数を用いるものを高速PLCといい、当初は高速PLCが無線通信に悪影響を与えるという懸念から、使用周波数帯の拡大は見送られた。しかし、その後も研究開発が進んだことで、2006年には屋内に限り2-30MHzの周波数使用を認める省令改正が行われ、パナソニックが独自に開発した高速PLC「HD-PLC」の対応製品が市場に登場した。
(現在は屋外での使用も認められている)
PLCの技術開発と普及はどのように進んだのか?
2006年に各社から家庭用に発売されたPLCアダプターは、LANケーブルを引くことなく、コンセントに挿すだけでインターネットに接続できるとあって大きな話題になった。
特にリビングルームと寝室、書斎など住戸内の複数の部屋でインターネットを使いたい場合に重宝された。どこか一ヶ所にインターネット回線を引いておけば、他の部屋にはLANケーブルを引く必要はない。PLCアダプターを各部屋のコンセントに挿すだけで通信することができたからである。