最新記事

中東

サウジ、外国からの投資誘致でドバイに挑む 熱き中東ビジネス拠点争奪戦

2021年2月20日(土)11時25分

サウジアラビアが海外の人材や資金誘致を巡るアラブ首長国連邦(UAE)・ドバイ首長国との「争奪戦」で、新たな一手を打ち出した。リヤドで撮影(2021年 ロイター/Ahmed Yosri)

サウジアラビアが海外の人材や資金誘致を巡るアラブ首長国連邦(UAE)・ドバイ首長国との「争奪戦」で、新たな一手を打ち出した。ただ、ドバイはイスラム圏の中では外国人に比較的自由な生活を許している上に、中東の商業・金融サービスの中心としての地位をすでに確立しており、その牙城を崩そうというサウジの挑戦はハードルが高い。

サウジのジャドアーン財務相は、ロイターの取材に対し、中東地域の拠点をサウジ以外の国に置く外国企業や商業機関には、2024年から政府案件の契約を停止すると述べた。

イスラム教誕生の地でもあるサウジは宗教面で保守的だが、実質的な政治指導者であるムハンマド皇太子が主導する形で金融・観光業拠点への脱皮を目指しており、今回の規制もその政策の一環。

一方、近隣のペルシャ湾岸諸国に比べて石油資源に恵まれないドバイは、ビジネスに対してオープンな姿勢や、富裕な外国人向けに派手な生活を約束することで、自らの経済基盤を築き上げてきた。

米シンクタンク・新アメリカ安全保障センターの非常勤上級研究員、レイチェル・ジンバ氏は「UAE、特にドバイの経済モデルに対してサウジが挑もうという姿勢を強めているが、ドバイは経営や法律、施設などの環境が非常に優れており、企業はドバイからオフィスを動かさないのではないか」と話した。

それでも、アラブ諸国で最大の経済規模を誇り、世界最大の原油輸出国でもあるサウジがもたらす脅威について、UAEは深刻に受け止めている。

同国は外国人については離婚や同棲を認め、許可なく飲酒できるようにするなど、外国企業誘致策を導入済みで、その面で競争上有利だ。さらに元ドバイ財務長官のナセル・アルシェイク氏は、サウジ政府の動きは湾岸地域市場の統合という原則に反すると早速けん制球を投げ、ツイッターに「世界の経験と歴史は、無理な誘致は長続きしないことを示している」と投稿した。

一方、サウジのジャドアーン財務相は、ロイターに対し、ドバイとリヤドは互いに補い合う関係になるだろうと強調。「ドバイやアブダビ、他の都市がどうかではなく、サウジにはこの地域に置かれる企業本社のうち、正当な取り分を手に入れる権利がある」と訴えた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

習主席、中央アジア5カ国との条約に署名 貿易・エネ

ワールド

米軍、中東に戦闘機追加配備 イスラエル・イラン衝突

ワールド

トランプ氏、イラン最高指導者「容易な標的だが殺害せ

ビジネス

米5月の製造業生産、前月比0.1%上昇 関税影響で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:コメ高騰の真犯人
特集:コメ高騰の真犯人
2025年6月24日号(6/17発売)

なぜ米価は突然上がり、これからどうなるのか? コメ高騰の原因と「犯人」を探る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロットが指摘する、墜落したインド航空機の問題点
  • 2
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越しに見た「守り神」の正体
  • 3
    イタリアにある欧州最大の活火山が10年ぶりの大噴火...世界遺産の火山がもたらした被害は?
  • 4
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 5
    50歳を過ぎた女は「全員おばあさん」?...これこそが…
  • 6
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 7
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 8
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?.…
  • 9
    コメ高騰の犯人はJAや買い占めではなく...日本に根…
  • 10
    ホルムズ海峡の封鎖は「自殺行為」?...イラン・イス…
  • 1
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロットが指摘する、墜落したインド航空機の問題点
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 4
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 5
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタ…
  • 6
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 7
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?.…
  • 8
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 9
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 10
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 7
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 8
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 9
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中