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欧州メーカー、国内回帰の理由

2010年1月12日(火)15時49分
シュテファン・タイル(ベルリン支局)

 原油が1バレル=145ドルまで高騰し輸送費用が跳ね上がった08年、人々は初めてグローバル化の限界を垣間見た。そして現在、景気低迷が企業の国外進出に二の足を踏ませている。

 アウトソーシング企業コグニザントによる昨年10月の調査によれば、欧州企業の40%が09年の国外外注計画を縮小していた。独フラウンホファー研究所の11月の調査では、生産拠点を自国に移す傾向が判明。ドイツ国外へ進出する企業と国内に戻る企業の比率は03年の6対1から、今は3対1になっている。また、多くの企業が中国から撤退。これは95年以降初めてで、国外外注によって国内の雇用が奪われる状況が大幅に解消した。

 フラウンホファー研究所の調査を行ったステファン・キンケルによれば、過去の景気後退時と違い、企業はコスト削減ではなく過剰生産の削減に努めているという。

 企業側は国外工場の多くが期待ほど利益を上げていないことも認識している。輸送の遅滞と、中国やブラジルなどの人件費高騰が原因だ。二酸化炭素排出量を基に課金する制度ができて輸送費が上がれば、利益はさらに目減りする。

「欧米の製造業の復活」といえるかは分からない。だが、やみくもに国外進出した企業が戻ってくるケースは今後もっと増えるだろう。

[2010年1月13日号掲載]

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