最新記事

亀井静香の暴走を止める方法

オブザーヴィング
鳩山政権

話題の日本政治学者
トバイアス・ハリスが現在進行形の
「鳩山革命」を分析する

2009.10.26

ニューストピックス

亀井静香の暴走を止める方法

鳩山は金融モラトリアム法案成立を唱えて走り回る亀井を閣僚委員会を使ってコントロールできる

2009年10月26日(月)15時32分

[2009年9月28日更新]

 先週ニューヨークとピッツバーグで華々しい世界デビューを果たした鳩山由紀夫首相が帰国した。今回の訪米で具体的な成果を挙げたわけではないが、象徴的で有意義な外遊となったことは確かだ。日本の新政権が今後、国際的な問題について積極的に発言していくことを世界に印象づけた。日米関係をはじめとする外交面でも、信頼できる政権だということを示した。

 とはいえ新政権は誕生から2週間しかたっておらず、本格的な始動はまだこれからだ。政策決定についても、そのシステム(体系)やプロセスを整理している段階で、実行するまでには至っていない。

閣僚委員会がカギを握る

 そんな鳩山が現在、最も早急に着手しなければならない課題は、亀井静香郵政改革・金融担当大臣(国民新党代表)との関係だ。亀井は鳩山の外遊中に中小企業の借入金の返済を猶予する「モラトリアム法案」の法制化を主張。与党連合内で強い基盤があるわけでもないのに、同法案を制度化できるのは自分だけだと訴えてきた。平野博文内閣官房長官が、亀井の発言は個人的なもので内閣の総意ではないと切り捨てても、亀井の主張は止まらなかった。

 亀井は、各大臣には誰にも邪魔されず自由に権限を振るうことができる縄張りが与えられていると考えているようだ。だがこの考え方は、閣僚委員会で政策決定を行っていくという民主党の計画と真正面から対立する。

 鳩山はもう「亀井問題」を先延ばしにはできない。亀井のふざけた行動は、自分のポストに満足していないために閣僚としての自分の立場を強めたいという思いからきていると、私は見ている。

 鳩山は亀井をコントロールできるはずだ。彼をコントロールするには、やはり閣僚委員会を通すしかない。鳩山は、モラトリアムに反対なら自分を更迭すればよいという亀井の発言を無視し、亀井に藤井裕久財務大臣と直嶋正行経済産業大臣を加えて金融部門の閣僚委員会を開催すべきだ。

 鳩山は強調する必要がある。政策とは、メディアを通して勝手に自分の考えを発信した大臣が決めるものではなく、閣僚委員会というシステムを通じて決められるものだと。

福島を頼りに亀井を孤立させよ

 基本政策閣僚委員会についても同じことが言える。これは鳩山と菅直人副総理に、国民新党代表の亀井と社民党党首の福島みずほを加えた党首級の委員会で、28日に初会合が開催される予定だ。この委員会が政府内でどのような役割を果たすのかは不透明なままだが、委員会の発表は他の閣僚に向けた具体的な政策指針ではなく、基本方針に限定されるべきだ。私は菅と民主党が福島を頼りにして、亀井を委員会内で孤立させることを期待する。

 閣僚委員会は組織されたばかりだ。新政府はまだ本格的に動き出していない。鳩山政権の働きにパニックをおこすのは早すぎる。今週、政府がなすべきことは政策決定に至るプロセスを固めること。亀井は民主党が政権を握ってからずっと厄介者だったが、影響力は限定的で閣僚委員会が早急に組織されれば困難な立場に追いやられるはずだ。委員会が今度の臨時国会に向けて政府の立法議案をまとめ、亀井の発言は政府見解ではないと繰り返せばよい。

 さらにイギリスで議会主導の政治を学んで帰国したばかりの小沢一郎民主党幹事長も、別の角度から亀井に圧力をかけるべきだ。国民新党は参議院で民主党と連携しているため、小沢は国民新党の参議院議員5人に影響力を持つことになるだろう。政府が亀井の意向をくまなくても、参議院で国民新党の支持を得られれば、亀井が鳩山に逆らうことは難しくなる。

 いずれにせよ今週が終わるころには、民主党政権の今後がもっとはっきり見えてくるはずだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

G7外相、イスラエルとイランの対立拡大回避に努力=

ワールド

G7外相、ロシア凍結資産活用へ検討継続 ウクライナ

ビジネス

日銀4月会合、物価見通し引き上げへ 政策金利は据え

ワールド

アラスカでの石油・ガス開発、バイデン政権が制限 地
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 3

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の衝撃...米女優の過激衣装に「冗談でもあり得ない」と怒りの声

  • 4

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 5

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 6

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 7

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 8

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 9

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 10

    日本の護衛艦「かが」空母化は「本来の役割を変える…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中