Picture Power

フォトフェスト・ヒューストン---ロシア特集

Contemporary Russian Photography

Photographs by Contemporary Russian Photography 1950s-2012 より

  • 110

フォトフェスト・ヒューストン---ロシア特集

Contemporary Russian Photography

Photographs by Contemporary Russian Photography 1950s-2012 より

パレード モスクワ 1956年 「スターリン後の『雪解け』、個人の声の再出現」より Lev Borodulin/Courtesy of Lumiere Brothers Center for Photography, Moscow

 世界でも有数の写真祭で全米でもっとも長い歴史があるフォトフェスト・ビエンナーレがテキサス州ヒューストンで始まった(4/29まで)。市内の110以上の美術館、ギャラリー、アート系NPO、大学、市民団体、企業が参加し、120もの写真展が開催されている。

 メイン会場では、ロシアを特集した企画展「Contemporary Russian Photography 1950s-2012」が話題で、展示は、近代からコンテンポラリー・フォトグラフィーまで約50年間の歴史を3部門に分けている。

1, 1940年代後半~1970年代
「スターリン後の『雪解け』、個人の声の再出現」(4/20まで)
スターリンの死後、フルシチョフの登場でソビエト連邦の「雪解け」時代に入り、言論などの取締り緩和などの政策によって文化の面でも自己表現が許されるようになった。資本主義諸国との交流も生まれ、写真にも新しい風が吹いた時代のヴィンテージ・プリントを展示。
また、別の視点として、1956~91年のソ連時代に世界報道写真コンテストで入賞した作品も同時に展示される(4/5まで)。

2, 1980年代半ば~2010年
「ペレストロイカと解放と実験」(4/29まで)
1980年代後半からのゴルバチョフによるグラスノスチ(情報公開)とペレストロイカ(改革)政策、1991年ソ連崩壊、その後に未制御のまま進んだ資本家の成長、ニュー・リッチや消費文化の台頭などを背景とした激動の25年間に生み出された作品で、創造力に溢れ、様々な方向性を見ることができる。

3, 2007年~2012年
「ヤング・ジェネレーション」(4/29まで)
前出の2つの時代とは違い、若者世代はソビエトの共産主義の直接体験はほとんどなく、グローバルなコネクションを持ち、消費主義、個人主義的社会でキャリアを積み始めた。海外で写真やアートを学ぶ者もある中、外向き志向だったペレストロイカ時代と比べると皮肉にも内向き志向で、個人的な体験や今日のロシアで成長する精神的ジレンマに浸っている。

ロシア国外ではほとんど知られることがなかった作品も多く、ロシア、ベラルーシ、ウクライナから142人の写真家、アーティストが参加している。

 写真展の他、オークション、レクチャー、ワークショップ、レビューなど、多数のイベントも展開されている。

関連リンク
FOTOFEST 2012 BIENNIAL
(詳しいイベントの内容と日程はフォトフェストのサイトでご確認ください)

*「ヤング・ジェネレーション」展参加者のアンナ・スクラドマンによる新シリーズの作品が3月28日発売の本誌4月4日号のピクチャー・パワーに掲載されます。

*フォトフェストでは世界各国から集まった写真家の作品をレビューする「ミーティング・プレイス」というイベントがあり、本誌フォトディレクターが招聘されました。後日現地報告をいたします。

MAGAZINE
特集:コメ高騰の真犯人
特集:コメ高騰の真犯人
2025年6月24日号(6/17発売)

なぜ米価は突然上がり、これからどうなるのか? コメ高騰の原因と「犯人」を探る

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロットが指摘する、墜落したインド航空機の問題点
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 4
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 5
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタ…
  • 6
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 7
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
  • 8
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?.…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中