最新記事

メルマガ限定ページ

ディズニーアニメで言葉を覚えた少年

2017年04月18日(火)18時30分

ディズニーのキャラクターはオーウェンの大切な仲間 ©2016 A&E Television Networks, LLC. All rights reserved.

<自閉症の少年が言葉を取り戻し自立していく姿を追うドキュメンタリー映画『ぼくと魔法の言葉たち』>

トランプ政権が生んだ対立と分断が、アメリカ社会から障害者やマイノリティーなど一部の人々を排除していく。そんな不安を反映してか、今年のアカデミー賞候補作は『ラビング 愛という名前のふたり』『LION/ライオン~25年目のただいま~』『メッセージ』など、寛容と多様性の受容が大切だと語るものが目立った。

長編ドキュメンタリー賞の候補になった『ぼくと魔法の言葉たち』もそんな作品だ(日本公開中)。主人公は3歳で自閉症と診断されたオーウェン・サスカインド。両親はある日、2歳の息子の様子が変わったことに気付く。言葉が出なくなり、意思疎通もできない。時計の針が逆戻りしたようだった。

さまざまな手を尽くして何年か過ぎた後、サスカインド一家はコミュニケーションの新たな手掛かりを見つけた。ディズニーのアニメ映画だ。オーウェンは『アラジン』『ライオン・キング』など大好きな映画を通して言葉を覚え、周囲との関わりを理解するようになっていく。

『ぼくと魔法の言葉たち』が撮影されたのは14年のこと。ロジャー・ロス・ウィリアムズ監督は一家を1年半追い、学校の卒業を控えるオーウェンの日々をカメラに収めた。父親でジャーナリストのロン・サスカインドがオーウェンのことを書いた著書『ディズニ・セラピー 自閉症のわが子が教えてくれたこと』がベースになっている。

ウィリアムズと、オーウェンの母コーネリア・サスカインドに、本誌トゥファエル・アフメドが話を聞いた。

――映画製作のきっかけは?

ウィリアムズ ロンと私は15年前に仕事をしたことがあり、長年の友達だ。ロンが本を書いているときに「これはすごいドキュメンタリーになると思う」と言っていて、私もそう思った。

それから2週間もたたないうちに、私は学校のダンスパーティーで踊るオーウェンと恋人のエミリーを撮影していた。

――コーネリア、あなたやオーウェンの人生について本や映画で打ち明けることは思い切った決断だったと思うが。

サスカインド 大きな決断だったし、家族でたくさん話し合った。ロンは作家だから、「自閉症についての本を書くべきだ。オーウェンや自閉症を取り巻く問題について書くべきだ」とみんなからずっと言われていた。

それに対して、2つの答え方をしてきた。1つ目は、私たちはその問題に近過ぎるし、日々のさまざまなことで手いっぱいだ、ということ。2つ目はもっと重要で、オーウェンのプライバシーの問題がある、と。

作家が家族についての本を書こうとするのは悪いことではない。でもそれが障害のある子供についての本で、しかも彼はそのことについて意見をきちんと言えない状況には問題がある。

オーウェンは19歳のときにこう言った。「みんなはパパとママのことをありのままの姿で見てくれるけど、僕のことはありのままの僕として見てくれない」。そのとき初めて、オーウェンと私たちの道のりについての本を書くことを考えた。

息子が3歳や4歳、5歳の頃にこんな本があったら、私たちの助けとなったか? と自問した。答えはイエスだった。

MAGAZINE
特集:トランプの帝国
特集:トランプの帝国
2026年2月10日号(2/ 3発売)

南北アメリカの完全支配を狙うトランプの戦略は中国を利し、世界の経済勢力図を完全に塗り替える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 2
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日本をどうしたいのか
  • 3
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...周囲を気にしない「迷惑行為」が撮影される
  • 4
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予…
  • 5
    韓国映画『しあわせな選択』 ニューズウィーク日本…
  • 6
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 7
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 8
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 9
    背中を制する者が身体を制する...関節と腱を壊さない…
  • 10
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 1
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 2
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 3
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予防のために、絶対にしてはいけないこととは?
  • 4
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染…
  • 5
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 6
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗…
  • 7
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 8
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 9
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 10
    エヌビディア「一強時代」がついに終焉?割って入っ…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 6
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 7
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 8
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 9
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中