コラム

「金融界のロックスター」カナダ次期首相...「米国51番目の州」「首相は州知事」発言のトランプに対抗できるか

2025年03月11日(火)21時00分
カナダ次期首相に選ばれたマーク・カーニー

カナダ次期首相に選ばれたマーク・カーニー氏(3月10日) ZUMA Press Wire via Reuters

<ジャスティン・トルドー首相の辞任に伴い、次期カナダ首相に選出されたのは政治的経験が皆無の金融テクノクラートであるマーク・カーニー元カナダ中銀総裁>

[ロンドン発]ドナルド・トランプ米大統領が「米国の51番目の州」にすべきと宣言し「州知事」呼ばわりされたジャスティン・トルドー首相の辞任表明に伴い、カナダの与党・自由党は9日、次期首相となる新党首にマーク・カーニー元カナダ銀行(中央銀行)総裁を選んだ。

トランプ氏は薬物や不法移民が米国に流入していることを口実にカナダからの輸入品に25%の関税を課した。原油や天然ガスなどのエネルギーは例外で関税は10%。カナダは併合された方がカナダ国民にとって有益で「減税」と「より良い医療」をもたらすとトランプ氏は皮肉った。

これに対しトルドー氏は「米国は最も親密なパートナーで同盟国である最も親密な友人に貿易戦争を開始した。ウソをつき、殺人を犯した独裁者ウラジーミル・プーチン露大統領をなだめるため積極的に協力しようとしている」と批判し、米国製品に25%の報復関税を課した。

政治的経験が皆無の金融テクノクラート

米国とカナダの関係は最悪だ。カナダの次期総選挙は10月の予定だが、早期解散・総選挙が実施される公算が強いと報じられている。自由党の政党支持率は30%から40%超に跳ね上がり、カナダ保守党の35.5%を抑え首位に立つ。カーニー氏はこの絶好機を決して逃さないだろう。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

FRB、利下げは慎重に進める必要 中立金利に接近=

ワールド

フィリピン成長率、第3四半期+4.0%で4年半ぶり

ビジネス

ECB担保評価、気候リスクでの格下げはまれ=ブログ

ワールド

ジャカルタのモスクで爆発、数十人負傷 容疑者は17
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2人の若者...最悪の勘違いと、残酷すぎた結末
  • 4
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 5
    「これは困るよ...」結婚式当日にフォトグラファーの…
  • 6
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 7
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 8
    NY市長に「社会主義」候補当選、マムダニ・ショック…
  • 9
    「なんだコイツ!」網戸の工事中に「まさかの巨大生…
  • 10
    なぜユダヤ系住民の約半数まで、マムダニ氏を支持し…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 5
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 8
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story