コラム

インフラ投資で、防災と景気対策の一石二鳥......が日本では無理な理由

2019年12月05日(木)18時23分
インフラ投資で、防災と景気対策の一石二鳥......が日本では無理な理由

台風19号で千曲川が氾濫した長野市(10月14日) KIM KYUNG HOONーREUTERS

台風15号と19 号が大きな被害をもたらしたことから、ダムや堤防など公的インフラへの関心が高まっている。だが、日本のインフラは新規建設一辺倒で推移しており、維持管理や更新についてはほとんど考慮されなかった。今の経済力では全てのインフラを再整備するだけの余力は残っていないというのが現実だ。

今回の台風は、大規模停電や浸水など甚大な被害を各地にもたらした。一部地域ではマンションの配電設備が浸水でトラブルを起こし、電力会社からは電気が供給されているにもかかわらず停電するという想定外の事態が発生した。

こうした状況を受け、かつてのような公共事業を再開し、公的インフラを強化すべきとの声が一部から上がっているが、現実はそう簡単ではない。

今回はたまたま水害が多発したことで治水への関心が高まったが、日本が直面している災害リスクは多岐にわたっており、全てに対応するには巨額のコストがかかる。日本は経済力に比して、既にインフラを造り過ぎている可能性が高く、インフラの強化どころか維持もままならないというのが実状である。

日本経済全体における総固定資本形成は年間約130兆円だが、減価償却に相当する固定資本減耗も120兆円に達しており、両者はほぼ拮抗しつつある。これは全てのインフラ投資を含んだ数値なので、より公的インフラに近いと思われる一般政府部門を見ても、毎年20兆円の支出(固定資本形成)に対して減価償却が18兆円と、両者は近い数字になっている。ちなみに22年前の1997年当時は、固定資本形成が30兆円以上もあり、これに対して減価償却は16兆円しかなかった。

これは一体、何を意味しているだろうか。

利権が新規建設を促進

公的インフラへの新規投資と既存インフラの減価償却が拮抗しているということは、会計上、新規のインフラ建設は増えていないとの解釈になるが、現実は少々異なる。

日本の公共インフラに対する支出は、多くの専門家が指摘するように今も大半が新規建設に偏り、既存インフラの更新にはほとんどお金が回っていない。会計上、減価償却が終わった設備も継続使用している可能性が高く、帳簿に存在しない膨大な資産が今も現役で使われている。つまり現在も、公的インフラは増え続けている可能性が高いのだ。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

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