トランプ政権、ミャンマーの重希土類を狙った外交戦略転換案が浮上

トランプ米政権に対し、ミャンマーに埋蔵している豊富な重レアアース(希土類)の獲得に向け、外交政策の大幅転換を促す複数の提案が寄せられていることが分かった。写真はKIAの兵士。カチン州ライザで2013年1月撮影(2025年 ロイター/David Johnson)
Trevor Hunnicutt David Brunnstrom Devjyot Ghoshal Poppy McPherson
[ワシントン/バンコク 28日 ロイター] - トランプ米政権に対し、ミャンマーに埋蔵している豊富な重レアアース(希土類)の獲得に向け、外交政策の大幅転換を促す複数の提案が寄せられていることが分かった。協議について直接知る4人によると、これらの案には米国の戦略上のライバルとなっている中国からミャンマーの重希土類を奪い取る思惑がある。
重希土類は戦闘機や高性能兵器の製造に用いられており、米国の生産量が非常に少ないため輸入に依存している。一方、ミャンマー北部のカチン州にある鉱山は重希土類の主要産地となっており、中国に輸出され、加工されている。
鉱物資源の確保がトランプ政権の重点課題となっている中で、情報筋は同政権が対ミャンマー外交政策を見直しており、貿易と関税について軍事政権と直接協議することを検討していると明らかにした。ホワイトハウスはコメントを拒否した。
ただ、現段階では何も決定しておらず、専門家は物流を巡って大きな障害があると指摘した。もしも提案を実行に移す場合には、ミャンマーの重希土類鉱床の大部分を支配する民族武装勢力と合意する必要性が生じる可能性がある。
関係筋によると、これらの案はノーベル平和賞受賞者のアウンサンスーチー氏の元顧問である米国の産業ロビイストが、ミャンマー国軍に抵抗している少数民族武装勢力のカチン独立軍(KIA)や外部専門家との間接的な協議を通じて、行政当局者らに提示した。その中にはミャンマー軍事政権とKIAとの和平合意を目指す案や、米国に対して軍事政権を巻き込まずにKIAと直接協力するように求める案があった。また、トランプ大統領がミャンマーからの輸入品に課すとした40%の関税の低減や、ミャンマーの軍事政権および同盟国に対する制裁の撤回、ミャンマーから輸出される一部の重希土類の処理のためにインドと協力すること、こうした施策の実行に向けた特使の任命などの案も含まれているという。
米国は2021年のクーデターで実権を掌握した国軍との直接対話を避けてきた。
情報筋によると、これらの提案の一部は7月17日にバンス米副大統領のホワイトハウスにある事務所で開かれた会議で議論された。会議の出席者には、ミャンマーで警備会社を経営する元ミャンマー米国商工会議所会長のアダム・カスティージョ氏や、バンス氏のアジア問題および貿易に関する顧問もいたが、バンス氏自身は会議には出席しなかった。
カスティージョ氏はロイターに対し、米国がミャンマーの和平仲介役を果たすことを米当局者に提案したと説明。中国の戦略を参考にし、まずはミャンマー国軍とKIAの自治協定を仲介するよう米政府に促したと明らかにした。
ミャンマーの希土類鉱床が中国にとって「金の卵を産むガチョウ」になっているとし、KIAを中心とする主要民族武装組織は中国による搾取にうんざりしており、米国と協力したいとの意向を持っていることを米国当局者に伝えたとも語った。
また、重希土類の加工と、最終的には米国への供給に向けて米国とインド、オーストラリア、日本が協力する協定をKIAと結ぶように働きかけてきたとも説明した。
ミャンマー軍事政権とKIAは、いずれもコメント要請に応じなかった。
バンス氏の事務所は、カスティージョ氏のホワイトハウス訪問についてコメントすることを拒否した。