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遠のく温暖化対策目標達成、記録的高温でも各国動かずと専門家が危機感

このところ陸と海の両方で記録的な高温が発生しているにもかかわらず、各国は長期的な気温上昇を産業革命前比で1.5度以内に抑えるというパリ協定の目標を引き上げることができず、目標達成は遠のきつつあるー。ドイツのボンで6月初めに開かれた国連気候変動枠組み条約の事務レベル会合では、専門家からこうした危機感が相次いで示された。写真はノルウェー領スバールバル諸島のニーオーレスン付近で4月撮影(2023年 ロイター/Lisi Niesner)
[シンガポール 30日 ロイター] - このところ陸と海の両方で記録的な高温が発生しているにもかかわらず、各国は長期的な気温上昇を産業革命前比で1.5度以内に抑えるというパリ協定の目標を引き上げることができず、目標達成は遠のきつつあるー。ドイツのボンで6月初めに開かれた国連気候変動枠組み条約の事務レベル会合では、専門家からこうした危機感が相次いで示された。
気象情報を分析する欧州連合(EU)のコペルニクス気候変動サービス(C3S)によると、世界の平均地表気温は数日にわたり産業革命前の水準を1.5度以上上回った。過去にも平均気温が一時的にこの水準上回ったことはあったが、6月1日から始まる北半球の夏としては今回が初めて。海水温も4月と5月の最高記録を更新した。
ニューサウスウェールズ大学の気象学者、サラー・パーキンスカークパトリック氏は「事態を変えるにはある程度かかるため、もう時間がない」と話す。
北米の一部地域は今月、気温が季節平均を10度程度上回り、カナダの森林火災からの煙に覆われた。インドでは高温による死者が急増。スペイン、イラン、ベトナムが異常な高温に見舞われ、昨年のような猛暑の夏が常態化するのではないかとの懸念が高まっている。
世界気象機関(WMO)は5月、現在から2027年までに年間平均気温が産業革命前と比べて1.5度以上高くなる可能性を66%と見積もった。
高温をもたらすエルニーニョ現象などの要因により、海水温度も上昇している。
世界の平均海面水温は3月下旬に21度を記録し、4月から5月にかけてもこの時期としては記録的な水準が続いた。オーストラリアの気象当局は太平洋とインド洋の海水温が10月までに平年より3度上昇する可能性があると警告している。
気候専門家によると、異常気象の範囲と頻度は増しており、今年も世界各地が干ばつに見舞われ、アフリカではあまり例がない強力なサイクロンが発生した。
しかし世界自然保護基金(WFFN)は今月の事務レベル会合で、化石燃料や資金といった重要な問題でほとんど進展が見られず、「気運の欠如を憂慮する」と警告した。
グリーンピースの北京上級気候アドバイザー、リー・シュオ氏は現状に失望しているとした上で、「われわれは本当に正念場を迎えている。現実を目の当たりにすることで、人々の動きや政治が変わることを望んでいる」と述べた。