ニュース速報

ワールド

ロシア、新型コロナワクチン認可 世界初 安全性に疑問も

2020年08月12日(水)10時18分

 8月11日、ロシアのプーチン大統領(写真)は、保健省が国内で開発された新型コロナウイルス感染症ワクチンを認可したと発表した。新型コロナワクチンは世界初。写真は7月、モスクワ郊外ノボオガリョボで撮影。提供写真(2020年 ロイター/Sputnik/Alexei Nikolsky/Kremlin via REUTERS)

[モスクワ 11日 ロイター] - ロシアのプーチン大統領は11日、保健省が国内で開発された新型コロナウイルス感染症ワクチンを認可したと発表した。新型コロナワクチンは世界初。2カ月弱の臨床試験(治験)で認可された。

ワクチンはガマレヤ国立研究所が開発。安全性や効能を確認する最終段階の臨床試験が続行中だが、当局の認可で、集団接種の道が開かれた。

スピード認可は世界的なワクチン競争で先んじるというロシアの決意を示しているが、科学や安全性よりも国の威信を優先しているのではないかとの懸念もある。

ロシア政府系ファンドの責任者であるキリル・ドミトリエフ氏は、コロナワクチンの認可について、1957年に旧ソ連が世界初の人工衛星「スプートニク1号」を打ち上げたことに匹敵すると称賛。同ワクチンは「スプートニクV」という名前で海外市場において販売される予定で、ロシアはすでに海外から10億回分のワクチンの注文を受けていると明らかにした。

国際契約により、年間5億回分のワクチン生産が確保されており、ブラジルでも生産される予定。また、アラブ首長国連邦(UAE)やフィリピンで間もなく治験が開始されるという。

プーチン大統領は政府の会議で、ガマレヤ研究所が開発したワクチンは安全であり、自分の娘も接種したと強調。「ワクチンは非常に有効に機能し、強力な免疫を形成する。そして繰り返しになるが、必要な全てのチェックに合格している」と述べ、早期の大量生産に期待感を示した。    

<第3相試験>

今回のワクチン承認は、数千人の被験者が参加する大規模な試験、いわゆる第3相試験の開始前に行われた。第3相試験は通常、規制当局の認可を得るために必要不可欠と考えられている。

独チュービンゲン大学病院のペーター・クレムスナー氏は「ワクチンを承認する前に大人数を対象した治験を実施するのは当たり前で、それを行わないままワクチンを承認するなど無謀だ」と述べた。

ロンドン大学クイーン・メアリー校のダンカン・マシューズ教授(知的財産法)は、コロナワクチン候補のニュースは歓迎されるべきだが、「安全性が優先されなければならない」と指摘。「米食品医薬品局(FDA)や欧州医薬品庁(EMA)は、緊急人道的使用のための迅速な承認手続きを取っており、ロシアも同様に慎重な対応をしているか確認する必要がある」とした。

米国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長は、このワクチンを広範に使用する用意が整っているという情報は承知していないと述べた。

その上で「ロシアが実際にワクチンの安全性と効果を確実に証明済みであることを願う。私には証明済みだとは到底思えない」と語った。

アザー米厚生長官はABCニュースの番組で、安全性が最も重要であり、後期段階の治験が鍵だと強調。「肝心なのはワクチンを最初に開発することではなく、安全で有効なワクチンを開発することだ」と述べた。また、米国では6種類のワクチン候補を開発中で、年内に有効なワクチンが得られる見通しだとした。

コロナワクチンは、世界中で100種類以上が開発されており、世界保健機関(WHO)のデータによると、少なくとも4種のワクチンが最終的な第3相試験に入っている。

*内容を追加しました。 

ロイター
Copyright (C) 2020 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

焦点:闇に隠れるパイロットの精神疾患、操縦免許剥奪

ビジネス

ソフトバンクG、米デジタルインフラ投資企業「デジタ

ビジネス

ネットフリックスのワーナー買収、ハリウッドの労組が

ワールド

米、B型肝炎ワクチンの出生時接種推奨を撤回 ケネデ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 5
    左手にゴルフクラブを握ったまま、茂みに向かって...…
  • 6
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開…
  • 7
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 8
    主食は「放射能」...チェルノブイリ原発事故現場の立…
  • 9
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 10
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 6
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 7
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 8
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中