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アングル:円金利高でも進まぬ円高、日銀「ハト派利上げ」見据え
9月12日、 日銀のマイナス金利解除が予想より前倒しになるとの思惑から進んだ円高が、早くも反転し始めた。写真は円紙幣と日本の旗のイメージ。2022年6月撮影(2023年 ロイター/Florence Lo)
Shinji Kitamura
[東京 12日 ロイター] - 日銀のマイナス金利解除が予想より前倒しになるとの思惑から進んだ円高が、早くも反転し始めた。日本の10年債利回りは9年8カ月ぶり高水準へ到達したものの、ドルは前日の145円台から147円目前まで切り返した。日銀が利上げしても大きく広がった日米金利差はさほど揺らがないこと、緩和的なスタンスを強調する「ハト派的な利上げ」となる公算が高いことなどが、円高観測をそいでいる。
<半日で2円の円高、人民元高も影響>
週明け11日の外為市場は荒れ模様で始まった。ドルは前週末ニューヨーク市場終盤の147円後半から、気配値を1円近く切り下げる「ギャップダウン」と呼ばれる動きを見せ、1円近く円高に振れた146円後半で取引がスタート。日本の10年債利回りが9年8カ月ぶりに0.7%台へ乗せる中、夕方にはさらに1円円高の145円後半まで下げ幅を拡大した。
きっかけは、読売新聞が9日に掲載した植田和男日銀総裁のインタビュー記事。マイナス金利解除を前倒しする可能性をにじませたとの受け止めが広がった。
とはいえ、円高は朝から一方向的に進んだ訳ではなく、午前中は146円半ばで売買が交錯する時間帯が続いた。植田総裁は従来通り金融緩和の継続も明言しており「ゼロ金利解除の前倒しは、可能性は低いが以前から指摘されていたこと。円高はそれほど続かないだろう」(国内証券のアナリスト)との声が当初は多かった。
夕方にかけて円をさらに押し上げる一因となったのは、中国人民元の急上昇だった。中国人民銀行(中央銀行)が元安阻止に向けた声明を発表したことなどで、元は対ドルで前週末の16年ぶり安値から急速に反発。対人民元で一気に強まったドル売り圧力が、対円にも波及した。
その後、中国当局の策の効果を疑問視する声もあって人民元が反落すると、円高も次第に収束。ドルはきょう午後に146.95円まで切り返した。日銀ゼロ金利解除観測の高まりによる円高は、実質1円程度だったことになる。
<円安にらんだマイナス金利解除、効果に疑念>
植田総裁の発言を受けて、エコノミストの間ではゼロ金利解除の予想時期を前倒しする動きが出ている。ドイツ証券は、これまで来年12月と予想していたマイナス金利政策の終了時期を1月に前倒しした。「インフレの想定以上の高止まりや、円安に対する警戒が(総裁の)タカ派的発言の背景」(チーフエコノミストの小山賢太郎氏)になったとの見方だ。
根強いインフレ抑制のため利上げを続ける主要国間で、大きく出遅れた日本がいつ引き締めに転じるかは、グローバル市場で最も大きなテーマのひとつ。それにもかかわらず円高が限られた要因は、一向に縮小しない日米金利差にある。
12日の円債市場では、10年債利回りが0.720%と2014年1月以来の水準へさらに上昇したほか、金融政策をより反映するとされる2年債利回りも一時0.050%と、今年1月につけた8年ぶり高水準へ接近した。しかし、米国の2年債利回りは現在5%近くを推移しており、円金利の上昇が金利差に与える影響はごくわずかだ。
さらに、日銀がマイナス金利の解除に踏み切る際は「これまでと同様に、その措置が引き締め的ではないと説明する『ドビッシュ・ハイク(ハト派的な利上げ)』となるだろう。米景気が強いままなら、結果的に円相場への影響はあまりない」(BNPパリバ証券のチーフエコノミスト、河野龍太郎氏)との意見もある。
市場の話題の中心はすでに、13日に米国で発表される8月消費者物価指数(CPI)へと移行している。「市場予想を上回れば日米金利差が再び拡大し、ドル/円が上昇へ転じる可能性も残っている」(みずほ証券のチーフ為替ストラテジスト、山本雅文氏)という。
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