ニュース速報

ビジネス

ECB、低利融資の借入枠巡る理事案に一部が反対=議事要旨

2021年01月15日(金)00時52分

欧州中央銀行(ECB)が14日公表した昨年12月の理事会の議事要旨で、貸出条件付き長期資金供給オペ(TLTRO)の銀行の借入枠引き上げを巡り、レーン専務理事兼チーフエコノミストの提案に一部メンバーが反対し、引き上げ幅が縮小されていたことが分かった。フランクフルトのECB本部で2019年7月撮影(2021年 ロイター/Ralph Orlowski)

[フランクフルト 14日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)が14日公表した昨年12月の理事会の議事要旨で、貸出条件付き長期資金供給オペ(TLTRO)の銀行の借入枠引き上げを巡り、レーン専務理事兼チーフエコノミストの提案に一部メンバーが反対し、引き上げ幅が縮小されていたことが分かった。

ECBは12月、新型コロナウイルスの感染第2波に対応しユーロ圏経済を支援するため、追加の金融緩和策を発表。パンデミック緊急購入プログラム(PEPP) の規模を5000億ユーロ拡大し、期間を2022年3月まで9カ月間延長したほか、TLTROの期間も1年間延長し、銀行が借り入れられる合計額を各銀行の適格融資残高の55%に引き上げた。

要旨によると、レーン氏は借入枠を60%に引き上げることを提案したが、「銀行のユーロシステムへの依存度が高まることが懸念される」として多くのメンバーが留保を表明。55%への引き上げで大筋合意したという。

政策変更を巡り理事会メンバー間で意見が分かれることはしばしば見られるが、通常は会合前に意見の相違が解消されるため、チーフエコノミストの提案が変更されるのはまれ。提案より小幅な借入枠引き上げになったことは、超緩和政策の一部を巡って懐疑的な見方が高まっていることを示唆する。

<PEPP買い入れ>

PEPPの買い入れ規模拡大についてもメンバー間で意見が対立し、レーン氏が提案した5000億ユーロよりも少ない額を主張するメンバーと、それよりも多い額を求めるメンバーがいたという。

ロイターは昨年12月、理事会前の議論で7500億ユーロの拡大が取り上げられたと報じた。

要旨によると、買い入れ余地は依然大きいものの、不確実性の高い環境下では万一に備える必要があるとの判断から、「PEPPの買い入れ規模をより緩やかに引き上げることを多くのメンバーが支持した」という。

一方で、買い入れ枠拡大により各国政府によるPEPP依存の高まりやモラルハザード、市場機能の歪みなどを引き起こすリスクが懸念されるとした。

また、新型コロナのパンデミック(世界的大流行)初期の市場暴落時には守られなかったが、国別の買い入れ枠を尊重することを求めた。

次回のECB理事会は21日に開催され、PEPPを含めた超緩和政策を維持するとみられている。

ロイター
Copyright (C) 2021 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=円が軟化、介入警戒続く

ビジネス

米国株式市場=横ばい、AI・貴金属関連が高い

ワールド

米航空会社、北東部の暴風雪警報で1000便超欠航

ワールド

ゼレンスキー氏は「私が承認するまで何もできない」=
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 6
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 7
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 8
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌…
  • 9
    赤ちゃんの「足の動き」に違和感を覚えた母親、動画…
  • 10
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中