ニュース速報

ビジネス

社債をオーバーウエート、財政・金融対策で企業債務下支え=PIMCO日本代表

2020年09月16日(水)17時09分

 9月16日 パシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)で日本の債券運用を統括する正直知哉マネージング・ディレクター(日本代表)はロイターのインタビューで、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて打ち出した政府・日銀による企業の資金繰り支援策が企業債務を幅広く下支えするとして、個々のバリュエーションを勘案しながら社債をオーバーウエートにする方針を明らかにした。写真は2015年8月、カリフォルニア州ニューポートビーチで撮影(2020年 ロイター/Mike Blake)

[東京 16日 ロイター] - パシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)で日本の債券運用を統括する正直知哉マネージング・ディレクター(日本代表)は16日、ロイターのインタビューで、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて打ち出した政府・日銀による企業の資金繰り支援策が企業債務を幅広く下支えするとして、個々のバリュエーションを勘案しながら社債をオーバーウエートにする方針を明らかにした。

グローバルな低金利環境に加え、日銀のイールドカーブ・コントロール(YCC)で日本国債の金利も低位安定が見込まれるとして、日本国債は「中立」だと述べた。一方、「超長期金利に関しては、中長期的にはより市場に委ねるかたちに日銀の対応はなっている」と指摘。こうしたトレンドが今後も続くことが見込まれるため、超長期国債は若干のアンダーウエートとする戦略で臨むと述べた。

<金利ゼロにコントロールできる限り、財政拡大可能>

コロナ禍で国債が増発される中でも金利は低位で安定した推移となっている。正直氏はその背景として、グローバルな中立金利の低下や低インフレに加え、日本では日銀がYCCで長期金利をゼロ%付近で抑えていることが大きいと指摘。「金利をほぼゼロにコントロールできる限り、財政は拡大できる」と述べた。

正直氏は、当面は拡張財政が続くと予想。ただ、企業の資金繰り支援やソルベンシー(支払い能力)が悪化した企業への資本性資金の注入について、コロナ禍の初期対応としては意義があるものの、財政支援が大きくなるほど、あるいは長期化するほど「必要な資本・労働の移動および再配分を阻害していく可能性が高い」と警戒感を示した。

日本国債の格下げの蓋然(がいぜん)性については「格付け機関の現状の日本のソブリンに対するコメントを見ている限りでは、少なくとも短期的にはかなり低い」と指摘。「もし仮に格下げされた場合、日本国債の金利が上がるというよりは、日本の銀行のドル調達に影響が出る可能性がある」と話した。

<日銀の金融政策、「国債管理政策の一部に」>

日銀の金融政策について、正直氏は「景気を刺激するという意味においての有効な追加金融政策手段は残っていない」と述べる半面、「コロナ対応で見られたように、金融システムを安定させる効果はあり得る」と述べた。

為替市場で円高が進行した場合、「日銀が金利を下げる可能性は低いが、ゼロとは言いにくい」と指摘。コロナ対応オペを利用した金融機関に対し、プラス0.1%付利を実施していることを念頭に「そこのパラメーターを少し調整してもらえれば、何もなかったときよりはマイナス金利の深掘りが銀行に受け入れやすくなっているかもしれない」と話した。

正直氏は「コロナ禍以前から金融政策が財政ファイナンスするかたちになった」と指摘。「YCCを実施したことにより、国債管理政策の一部になってしまった」と述べ、日銀が主導する形で出口に向かうことはあり得ないと語った。

日銀の超低金利政策の副作用については、市場機能が失われていることに懸念を示した。「資産価格を実体経済より大きく乖離させることで、資産価格上昇(の恩恵を受ける)資産を持つ人と持たない人の格差を広げる。これだけ人為的に資産価格をゆがめ、市場機能を消失させた結果として、企業のゾンビ化が起こる。資本・労働の低生産な分野への固定化により経済全体の生産性の上昇を抑えてしまうという、とても重大な副作用がある」とした。

   

<新政権の改革には懐疑的>

正直氏は、安倍政権の経済政策「アベノミクス」について「景気の浮揚、雇用の拡大にある程度成功した」などと評価。その一方で「長期政権という政治資本を、本来日本経済にとって重要な痛みを伴う改革にほとんど使わなかった」と指摘した。

年金、医療、雇用法制といった国民の痛みを伴う改革は、少なくとも短期的にはデフレにつながると指摘。デフレ圧力に備え、改革に先行して景気を大きく浮揚させる必要があるが、コロナ禍で世界経済は厳しい状況が続き、累次の政策対応で選択肢も限られてきていることから「重要な改革が新政権のもとで行われるというのは疑問を持たざるを得ない」と述べた。

(和田崇彦、木原麗花 編集:内田慎一)

ロイター
Copyright (C) 2020 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

GMメキシコ工場で生産を数週間停止、人気のピックア

ビジネス

米財政収支、6月は270億ドルの黒字 関税収入は過

ワールド

ロシア外相が北朝鮮訪問、13日に外相会談

ビジネス

アングル:スイスの高級腕時計店も苦境、トランプ関税
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「裏庭」で叶えた両親、「圧巻の出来栄え」にSNSでは称賛の声
  • 2
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 3
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 4
    アメリカを「好きな国・嫌いな国」ランキング...日本…
  • 5
    セーターから自動車まで「すべての業界」に影響? 日…
  • 6
    トランプはプーチンを見限った?――ウクライナに一転パ…
  • 7
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、…
  • 8
    『イカゲーム』の次はコレ...「デスゲーム」好き必見…
  • 9
    【クイズ】日本から密輸?...鎮痛剤「フェンタニル」…
  • 10
    日本人は本当に「無宗教」なのか?...「灯台下暗し」…
  • 1
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 2
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 3
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 4
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 5
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 6
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 7
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗…
  • 8
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 9
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 10
    孫正義「最後の賭け」──5000億ドルAI投資に託す復活…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中