ニュース速報

ビジネス

トランプ政権、連邦職員年金の中国株投資に停止圧力

2020年05月13日(水)09時24分

トランプ米政権が連邦職員や軍人の退職金を運用する基金に対し、米国の安全保障を脅かす恐れがあるなどと米政府が認識する中国企業への投資を停止するよう圧力をかけていることが、ロイターが入手した書簡で明らかになった。 バージニア州アーリントンで2018年11月撮影(2020年 ロイター/Yuri Gripas)

[ワシントン 12日 ロイター] - トランプ米政権が連邦職員や軍人の退職金を運用する基金に対し、人権侵害の疑いや米国の安全保障を脅かす恐れがあると米政府が認識する中国企業への投資を停止するよう圧力をかけていることが、ロイターが入手した書簡で明らかになった。

問題となっているのは、軍人や連邦職員の退職金である連邦公務員向け確定拠出型年金(TSP)を運用する政府機関、連邦退職貯蓄投資理事会(FRTIB)による400億ドル規模の国際ファンドの投資先。

FRTIBは2017年、利益拡大を目指して2020年下期に投資先を変更することを決定。米政府が警戒する中国企業の株式を含む指数が採用される見通しとなっている。

しかし、米政府内の対中強硬派は、中国軍に製品を供給する中国航空工業集団[SASADY.UL]や、人権侵害で米政府が制裁を科した監視カメラ大手の杭州海康威視数字技術(ハイクビジョン)<002415.SZ>などの企業に連邦政府職員の年金基金を投資するべきではないと主張している。

中国企業は米国の厳しい財務情報開示規則に従う必要がない、という点も投資家にとってリスクが高いと指摘している。

スカリア労働長官は11日、FRTIBのマイケル・ケネディ理事長に送付した書簡で、中国企業の株式を含むファンドに米国の連邦職員や軍人の退職金を投資することをやめるよう求めた。

同長官には、カドロー国家経済会議(NEC)委員長とオブライエン大統領補佐官(国家安全保障担当)がこうした投資に反対する意向を示す手紙を送っていた。

その中でカドロー氏らは「中国企業への投資には重大かつ不必要な経済リスク」があると指摘。新型コロナウイスの感染拡大について、中国政府の「非難に値する行動」により「追加制裁の可能性」があることに言及している。

FRTIBのキム・ウィーバー報道官は、スカリア長官からの書簡に関するコメントを控えた。ただ、米国の法律ではFRTIBは「投資に関する方針を策定」し、年金基金の加入者の利益のために役割を果たす権限が与えられており、スカリア長官の働き掛けは提言の位置付けとなる。

連邦政府職員を代表する労働組合の米政府職員総同盟(AFGE)の政策ディレクター、ジャクリーン・サイモン氏は「TSPの加入者は、政治的なテストではなく、受託者責任のテストに合格した投資先の選択肢を望んでいる」と指摘した。

ホワイトハウスは今月、FRTIBの理事を3人指名しており、投資に関する方針転換につながる可能性がある。ただ、指名承認のプロセスが前進するかどうかは不透明だ。

スカリア長官の書簡は、最初にFOXビジネス・ネットワークとブルームバーグ・ニュースが報じた。ロイターは先月、関係筋の話として、米議員や元政府高官が、人権侵害や米国の安全保障を脅かす疑いのある中国企業への株式投資を連邦公務員の年金基金に停止させるよう、トランプ政権に働き掛けていると報じていた。

ロイター
Copyright (C) 2020 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

スタバ労組のスト拡大、全米34都市でバリスタ数百人

ワールド

トランプ氏の州兵派遣措置、費用は3.4億ドル=上院

ビジネス

EU、内燃エンジン車販売禁止計画を断念=欧州人民党

ビジネス

米コストコ9-11月売上高・利益が予想超え、年末商
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 2
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれなかった「ビートルズ」のメンバーは?
  • 3
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキャリアアップの道
  • 4
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 5
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 6
    【揺らぐ中国、攻めの高市】柯隆氏「台湾騒動は高市…
  • 7
    受け入れ難い和平案、迫られる軍備拡張──ウクライナ…
  • 8
    「何これ」「気持ち悪い」ソファの下で繁殖する「謎…
  • 9
    ピットブルが乳児を襲う現場を警官が目撃...犠牲にな…
  • 10
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 9
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 10
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中