ニュース速報

ビジネス

焦点:円高でも日本株高、海外勢引き付ける

2017年11月02日(木)15時34分

 11月2日、円高にもかかわらず日本株高となる中、ゴールドマン・サックス・グループ・インクやブラックロックを含む海外勢が日本株に数百億ドル規模の資金を投じている。写真は都内で10月撮影(2017年 ロイター/ISSEI KATO)

[ニューヨーク/東京 1日 ロイター] - 円高にもかかわらず日本株高となる中、ゴールドマン・サックス・グループ・インクやブラックロックを含む海外勢が日本株に数百億ドル規模の資金を投じている。

今年に入ってから円相場は対ドルで3%近く上昇しているものの、日経平均<.N225>は1996年以来の高値を付け、配当を含むリターンは17%、ドル建てでは20%となっている。通常、円高は日本の輸出にとって不利に働くため、日本株安につながる。

外国人投資家は従来、企業の利益拡大の持続性に疑念を抱いていたことから日本株を総じて避けていたが、東京証券取引所によると、過去6週間で日本株と先物を4兆4000億円(390億ドル)買い入れた。北朝鮮情勢が緊迫化した7月半ばから9月前半にかけては2兆4000億円(210億ドル)の売りを出していた。

<「最も割安」>

堅調な内需を背景に日本の2017年4─6月期実質国内総生産(GDP)が年率換算で2.5%増と、6四半期連続のプラス成長となる中、日本株は外国人投資家にとって依然魅力的となっている。

ブラックロック・グローバル・アロケーション・ファンドのマネジャー、ラス・ケステリッチ氏は「日本はおそらく最も割安な先進国市場だろう。唯一の割安な先進国市場ではないか」と述べた。開示資料によると、同ファンドは9月末時点で運用資産における日本株の割合が8.6%となっており、前月の7.8%から上昇した。

トムソン・ロイターのデータによると、予想PER(株価収益率)は米国株が18.6倍、日本株が15.4倍だ。

ケステリッチ氏によると、しぶとい低インフレや重い債務負担、高齢化など、割安となっているのにはもっともな理由がある。

<日銀リスクも>

日銀は大規模な金融緩和策を維持しており、年間6兆円(530億ドル)のペースで上場投資信託(ETF)を買い入れている。黒田東彦総裁は10月31日、本格的な出口戦略の実行に乗り出す前にETFの買い入れペースを鈍らせる可能性を示唆した。

市場は現時点でそうしたリスクを考慮していない。マクロ・リスク・アドバイザーズの分析によると、統計的にみて今年に入ってから日本株は円高でも売られなくなっている一方で、円安の際には依然として値を上げている。

ソニーフィナンシャルホールディングス<8729.T>のエコノミスト、渡辺浩志氏は「輸出は円相場の影響を受けにくくなっている」と指摘。「現在のところ、デジタル製品に対する需要は力強く、多くの日本製品は価格面よりも品質面で競争力がある」と語った。

<ファンダメンタルズに注目>

日本の輸出の伸び率は8月に約4年ぶりの大きさとなった。9月には伸びが鈍化したものの、エコノミストは一時的なものとみている。また、9月の小売業販売額(全店ベース)は前年比2.2%増と、3カ月ぶりの高い伸びとなった。

グラスキン・シェフ・アンド・アソシエーツのチーフエコノミスト、デービッド・ローゼンバーグ氏はノートで「(日本の)25年にわたる長期的な下降トレンドが最近崩れた」と指摘。日本株と円相場の相関関係(逆相関)が崩れていることについて、失業率の低下と内需拡大が小型株を支援する中、為替市場の動向ではなく、企業のファンダメンタルズ(基礎的条件)を基に株式が取引されていることを示すものだと説明している。

<企業改革拡大か>

一方、大きなスキャンダルを受け、一部の投資家は依然としてコーポレートガバナンス(企業統治)を懸念。神戸製鋼所<5406.T>の製品データ改ざん問題は底なし沼の様相を呈している。

ただ、資産運用会社ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントの顧客ポートフォリオマネジメント・ビジネス戦略部門グローバル責任者、ケイティ・コック氏は、日本経済の競争優位性が高まる可能性があり、役員報酬といった問題を巡る企業改革が一層拡大しそうだと指摘する。

同社の日本株ポートフォリオには、年初来で55%値を上げている日本電産<6594.T>や、同52%高のポーラ・オルビスホールディングス<4927.T>が含まれている。

日本電産は成長市場である電気自動車向け小型モーターを製造し、ポーラ・オルビスの化粧品は拡大する中国の中間層を引き付けている。

<自動化もテーマ>

日本株を巡ってはオートメーション(自動化)もテーマだ。米国に上場する2つのロボティクスETF(グローバルX・ロボティクス&アーティフィシャル・インテリジェンスETFとROBOグローバル・ロボティクス・アンド・オートメーション・インデックスETF)は、ファナック<6954.T>などの日本株に多額の投資を行っている。

ファナックは工場の自動化を支援しており、株価は年初来で38%以上値を上げている。また、トムソン・ロイター傘下のリッパーによると、2つのロボティクスETFにはこれまでに21億ドルの資金が流入している。

ロイター
Copyright (C) 2017 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=大幅続伸、ダウ500ドル超値上がり 

ワールド

米豪首脳がレアアース協定に署名、日本関連含む 潜水

ワールド

米控訴裁、ポートランドへの州兵派遣認める判断 トラ

ワールド

米ロ外相が電話会談、ウクライナ戦争解決巡り協議=国
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 7
    TWICEがデビュー10周年 新作で再認識する揺るぎない…
  • 8
    【インタビュー】参政党・神谷代表が「必ず起こる」…
  • 9
    若者は「プーチンの死」を願う?...「白鳥よ踊れ」ロ…
  • 10
    ニッポン停滞の証か...トヨタの賭ける「未来」が関心…
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 3
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ海で「中国J-16」 vs 「ステルス機」
  • 4
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 7
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 8
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 9
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 10
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中