ニュース速報

ビジネス

アングル:投機筋の円ロングが拡大、短期的にはドル/円の反発にも

2016年03月07日(月)20時17分

 3月7日、投機筋の円買いが、急拡大している。ロングポジションだけをみれば過去2番目の大きさだ。リスク回避の円買いだけでなく、トレンドの変化を感じた投機筋が、ドル売り/円買いに動いたことが大きいとみられている。写真はドル紙幣、都内で2010年11月撮影(2016年 ロイター/Issei Kato)

[東京 7日 ロイター] - 投機筋の円買いが、急拡大している。ロングポジションだけをみれば過去2番目の大きさだ。リスク回避の円買いだけでなく、トレンドの変化を感じた投機筋が、ドル売り/円買いに動いたことが大きいとみられている。

短期的にはドル/円反発のエネルギーとなりそうだが、どこかの時点で再び円高に回帰するとの見方も根強い。

<過去2番目の円買い>

投機筋の動向を見る上で市場で注目されているのが、米商品先物取引委員会(CFTC)のまとめるIMM通貨先物の非商業(投機)部門の取組だ。

IMMはオプションなどの取引が含まれず、投機筋の取引全体の動向を映すわけではないが、市場動向を見る上で目安として意識する市場参加者は少なくない。ポジションが一方向に傾きを強めれば、調整のための反対売買が警戒される。

4日発表分(3月1日までの1週間)では、ネットでの円の買い越しは前週の5万2734枚から5万9625枚に増加し、2012年1月以来の高水準となった。

1986年以降のデータで買い越しが最大だったのは、2008年3月25日までの週で6万5920枚。今回の円買い越し規模は、過去5番目の大きさとなる。

さらに市場の関心を集めたのが、9万4070枚となった円ロング(買い持ち)ポジションの拡大だ。同じく08年3月4日までの週の9万4654枚に次いで、過去2番目の大きさに膨らんだ。これらのロングが巻き戻されれば、ドル/円のリバウンドに弾みがつく可能性がある。

年初からの下落で円売り越しが円買い越しに転換した局面でのドル/円は、118─119円付近を推移していた。仮に足元の円買い越しが解消して投機筋のポジションの傾きが解消に向かうなら「120円手前がひとつのターゲット」と、みずほ証券・チーフFXストラテジスト、鈴木健吾氏は指摘している。

<トレンド変化との見方も>

ただ、投機筋は、ドル/円のトレンド変化を敏感に感じ取っているとの見方もある。

ドル/円は他の通貨ペアに比べ、CTA(商品投資顧問業者)などを含むトレンドフォロワーが比較的多いとされる。過去3年以上にわたって右肩上がりだったトレンドは、2月前半の急速な円高の流れの中で、明確に下向きに変わった。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券・チーフ為替ストラテジスト、植野大作氏は、1年間トータルの損益水準を示す52週移動平均線がしっかり下方向を向き始めたことが、投機筋の行動にも影響を与えたのではないかとみる。

行き場を失ったマネーが、円買いに向ったとの見方も有力だ。英国のEU離脱問題を踏まえて、ポンドやユーロから円や金に資金が流れ込みやすくなっている面もある。ユーロ/円やポンド/円、豪ドル/円といったクロス円の下落は、ドル/円の下押しに作用した。

欧州では日銀に先立ってマイナス金利が採用されたが、これが銀行の信用不安を助長しかねないとの懸念が浮上。日銀がさらにマイナス金利の幅を拡大するのは困難との見方につながり、投機筋の円買いを強めた面があるともみられている。

野村証券・チーフ為替ストラテジスト、池田雄之輔氏は、ヘッジファンドなどの動向について「ドル買いはしたくないという雰囲気になっている」と話す。

マクロの米経済指標は改善を示してきているが「米追加利上げで株と原油がメルトダウンするとの不安心理が渦を巻いているうちは、なかなか日米金利差だけに着目してその通りにポジションを動かすというメンタルにならない」と、三菱UFJMS証の植野氏は指摘している。

(平田紀之 編集:田巻一彦)

ロイター
Copyright (C) 2016 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

岸田首相、「グローバルサウスと連携」 外遊の成果強

ビジネス

アングル:閑古鳥鳴く香港の商店、観光客減と本土への

ビジネス

アングル:中国減速、高級大手は内製化 岐路に立つイ

ワールド

米、原発燃料で「脱ロシア依存」 国内生産体制整備へ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 3

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが...... 今も厳しい差別、雇用許可制20年目の韓国

  • 4

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 5

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 6

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 9

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 10

    ウクライナがモスクワの空港で「放火」工作を実行す…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 7

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中