ニュース速報

ビジネス

米FRB、引き締めサイクル覆す公算小さい=イエレン議長

2016年02月11日(木)05時40分

 3月10日、米FRBのイエレン議長は、自国経済への世界リスク波及に警戒感を示した。写真はワシントンで昨年12月撮影(2016年 ロイター/Jonathan Ernst)

[ワシントン 10日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)のイエレン議長は10日、下院金融委員会で行った証言で、金融情勢の引き締まりや中国をめぐる不透明感などが米経済に対するリスクとなる恐れがあるとの認識を示しながらも、FRBが12月に開始した金融引き締めサイクルを覆す必要が出てくる公算は小さいと述べた。

イエレン議長は質疑応答で「リセッション(景気後退)のリスクは常に存在し、世界的な金融情勢が景気減速につながる可能性があると認識している」としながらも、「この先に米経済を待ち受けているものについて早まった結論に飛びつくことがないよう注意したい」とし、「連邦公開市場委員会(FOMC)が近く利下げを行う必要に直面するとは想定していない」と述べた。

また、マイナス金利導入については「われわれは用意周到な計画作り(prudent planning)に基づきどのような選択肢が利用できるか常に検討する」としながらも、望ましい選択肢ではないとの考えを示した。

FRBは前年12月に利上げを決定し、事実上のゼロ金利政策を解除。この日のイエレン議長の議会証言は12月の利上げ後、公の場での初めての見解表明となった。

投資家は年内の追加利上げの可能性はほぼ消えたとみているが、議長の発言はいずれの選択肢も残した格好となった。

コーナーストーン・マクロのアナリスト、ロベルト・ペルリ氏は「議長が伝えたかったのは、利上げは基本シナリオだが、まずは市場が安定化する必要があるということだ」と述べた。

証言では、株安に伴う金融情勢の引き締まりや、中国をめぐる不透明感、信用リスクの世界的な再評価で米経済の歯車が狂う恐れがあるとの認識を表明した。

ただ、米経済の成長は継続し、FRBは計画通りに段階的に金融政策を調整していくことができるとの考えを強調。「現在見られる雇用増、および賃金上昇の加速により実質所得の伸びが支援され、結果的に消費支出も後押しされる」とし、他の主要中銀がマイナス金利を導入するなど緩和的な金融政策を維持する中、「世界的な経済成長は次第に上向く」との認識を示した。

米経済の現況については、家計収入や資産が増大しつつあり、国内消費も伸び続けたと指摘。年後半に石油部門以外の設備投資が加速したとの認識を示した。

米金融部門は原油や世界の社債市場低迷のストレスに耐えており、国内主要銀のエクスポージャーは限定的と指摘。ただ「これら部門の状況が悪化すれば、より広範にストレス要因が生じる可能性もある」とした。

議長は、労働市場の改善が続き、インフレ率もFRB目標に向けて上昇すると予測。「経済活動は向こう数年間、緩やかなペースで拡大し、労働市場の各種指標も引き続き堅調な内容となるだろう」と述べた。失業率は現在4.9%と、FRBが完全雇用に近いと見なす水準にあるが、議長は想定通り景気が回復すれば、一段と低下するとの見方を示した。

*内容を追加して再送します。

ロイター
Copyright (C) 2016 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

トムソン・ロイター、第1四半期は予想上回る増収 A

ワールド

韓国、在外公館のテロ警戒レベル引き上げ 北朝鮮が攻

ビジネス

香港GDP、第1四半期は+2.7% 金融引き締め長

ビジネス

豪2位の年金基金、発電用石炭投資を縮小へ ネットゼ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉起動

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    ポーランド政府の呼び出しをロシア大使が無視、ミサ…

  • 6

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 7

    米中逆転は遠のいた?──2021年にアメリカの76%に達し…

  • 8

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 9

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 9

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中