ニュース速報

アルゼンチンペソ続落、大統領予備選の余波続く 債券も値下がり

2019年08月14日(水)11時31分

[ブエノスアイレス/ロンドン 13日 ロイター] - 13日の取引でアルゼンチンペソが続落し、同国債も値下がりした。11日に実施された大統領選の予備選挙で、野党候補のフェルナンデス元首相が現職マクリ大統領を抑えて首位となり、マクリ氏の再選が危ぶまれる状況となった余波が続いている。

ペソは4.29%安の1ドル=55.9ペソで終了。序盤の取引では9.32%安の59ペソを付ける場面もあった。12日にはフェルナンデス元首相によるポピュリズム政権復活への懸念から一時30%下落し、1ドル=65ペソと過去最安値を付けていた。

アルゼンチン中銀は12日以降、ペソ安阻止へ総額2億5500万ドルの外貨準備を売却している。

マーケットアクセスのデータによると、アルゼンチンの100年債は13日、6ポイント超下落し、額面1ドル当たり51セントとなった。前週末9日の時点では約75セントだった。

アルゼンチン国債の債務不履行(デフォルト)に対する保険の機能を持つクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)は引き続き上昇。IHSマークイットのデータによると、CDSのプレミアムは5年ぶりの高値を付けた前日の1994ベーシスポイント(bp)から一段と上昇し2116bpとなった。同水準が示す5年以内のデフォルト確率は70─75%。

アルゼンチン中銀のチーフ・エコノミストを務めていたバンク・オブ・アメリカ・メリルリンチ(BAML)のクラウディオ・イリゴージェン氏は、「市場はフェルナンデス政権がデフォルトに陥り、資本規制を課すほか、国際通貨基金(IMF)と再交渉する可能性が高いと想定している。一言で言えば、フェルナンデス政権はポピュリズムの復活と捉えられている」と述べた。

12日のペソ急落は、米中貿易摩擦や香港のデモですでに神経を尖らせている世界の株式市場に動揺をもたらした。

ラボバンクのストラテジスト、マイケル・エブリー氏は「アルゼンチンの経済規模は小さいが、世界の金融市場が最も望んでいないのは市場寄りの政権がまたしてもポピュリズムに敗れる事態だ」と指摘した。

リフィニティブのデータによると、アルゼンチン資産が12日のような大幅な同時安を記録するのは2001年の経済危機でデフォルトに陥って以来。

アルゼンチンのカントリーリスク指標は164ベーシスポイント(bp)上昇して1631となり、2009年以来の高水準に達した。

アルゼンチン政府の債務返済能力に対する懸念が高まる中、投資家は政府による短期債券の借り換えを注視している。ジェフリーズ・フィックスト・インカムは投資家向けノートで「短期債の満期が来るたびに市場の懸念が膨らむだろう」とした。

モルガン・スタンレーは顧客向けノートで「債券価格はすでに大幅に下落しているが、一段の下押し圧力とボラティリティー増大を想定しており、ハードカレンシー債を避けるスタンスに移行する」と指摘。外国人投資家が保有するアルゼンチン債券は新興国ファンドを含め1090億ドルあり、売り圧力につながるとした。

アナリストはペソ安継続を想定。BAMLは2019年末に1ドル=70.5ペソ、20年末に106.6ペソと予想している。

*内容を追加しました。

ロイター
Copyright (C) 2019 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国万科、償還延期拒否で18日に再び債権者会合 猶

ワールド

タイ、2月8日に総選挙 選管が発表

ワールド

フィリピン、中国に抗議へ 南シナ海で漁師負傷

ビジネス

ユーロ圏鉱工業生産、10月は前月比・前年比とも伸び
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 2
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジアの宝石」の終焉
  • 3
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 4
    極限の筋力をつくる2つの技術とは?...真の力は「前…
  • 5
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 6
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 7
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    大成功の東京デフリンピックが、日本人をこう変えた
  • 10
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 9
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中