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焦点:観光大国NZの水質汚染、「100%ピュア」は看板倒れか

2019年01月27日(日)11時45分

Praveen Menon

[ウェリントン 18日 ロイター] - ニュージーランド(NZ)が誇る「美しくゆたかな自然環境」というイメージが打撃を受けている。田園地帯を訪れた観光客が、ごみや農業排水、人間の排泄物で汚染され、立ち入り禁止となった湖沼や河川の写真を投稿しているためだ。

好況に沸く酪農産業と、手付かずの自然の魅力を求めて押し寄せる観光客が、「100%ピュア」と銘打って盛んに宣伝されてきた同国の自然環境に長い影を落としている。

特に影響を受けているのが、かつては文明による汚染を免れていた河川や湖沼で構成される広大な水系だ。いまや経済協力開発機構(OECD)加盟国のなかでも、最も汚染度が高い部類に入る、と一部の専門家は指摘する。NZ環境省の2014年報告では、水系の約6割は遊泳に適さないという。水質はその後さらに悪化したと専門家は言う。

市場調査会社コルマー・ブラントンが先月実施した調査によれば、82%が湖沼や河川の汚染について非常に、または大変に懸念していると回答しており、生活コストや子どもの貧困、気候変動などの問題に対する懸念を上回った。

「(国民は)河川や湖沼で泳いだり、魚釣りをしたり、食糧を得たりすることができなくなりつつあることを非常に心配している」と語るのは、この調査を委託したNGOのフィッシュ&ゲーム・ニュージーランドで最高経営責任者(CEO)を務めるマーティン・テイラー氏だ。

「人々はこうした活動を生まれながらの権利だと考えているが、過去20年、畜産業の発展によって水の汚染レベルが上がったために、そうした権利は失われつつある」

総選挙を来年に控えるアーダーン首相にとって、水質汚染が重要なテーマとなる可能性がある、と専門家は指摘する。首相は2017年、環境保護のための社会改革や立法措置を公約に掲げて連立政権のトップとなった。だが同政権下で企業の景況感は低迷している。

<「牛が多すぎる」>

グリーンピースが先週、人工窒素肥料の禁止を求めてツイッター上で展開したキャンペーン「#toomanycows(牛が多すぎる)」は、1万3000人以上の署名を集めた。

「NZでは、すでに牛があまりにも多すぎる。酪農の強化拡大にとって大きな鍵となるのは人工窒素肥料であり、それが河川と気候変動に対して危険なダブルパンチを浴びせている」とグリーンピースのニック・ヤング氏は語る。

この国では、約470万人の総人口を上回る500万頭近い牛が飼育されている。

北島西部にある有名なタラナキ山近郊にある人気の遊泳場は今月、排泄物による汚染の指標となる大腸菌増加により閉鎖された。汚染源を特定するための検査が行われているが、過去には、この水系を汚染した原因として、近隣の酪農場からの排水が指摘されていた。

国内の酪農家はやるべきことをやっている、とデイリーNZのティム・マックルCEOは語る。酪農場に接する水路の97%は牛から隔離されており、水辺や湿地との緩衝地域を確保するため、かなりの努力を払っているという。

「実際、あらゆる種類の土地利用が水質に影響を与えている。そして野菜、果実、酪農、牛や羊、あるいは鹿の畜養を含め、あらゆる農場が確実に水路を保護するために協力しなければならない」と同CEOは声明で述べた。「最も汚染された河川は、実は都市中心部を流れるものであり、これについては人々ができることがある」

NZの河川のうち、酪農場内を流れるものは全体の約15%にすぎない、と彼は付け加えた。

<「オウンゴール」>

主力産業である酪農と観光が直接、NZの国内総生産(GDP)2000億ドル(約22兆円)に貢献している割合は、それぞれ約3.5%と6.1%だ。

人気映画シリーズの「ロード・オブ・ザ・リング」や「ホビット」で理想的な背景となった、滝の連なる河川や汚れない森林、青々とした牧場といった同国の美しく自然豊かなイメージに、どちらの産業も依存している。

人口密度の低いNZの国土は、英国や米カリフォルニア州程度の広さの山岳地域だ。その4分の1以上が自然保護地域や国立公園に指定されている。

中国が旅行シーズンのピークとなる旧正月(春節)を迎える2月には、NZに大量の観光客が押し寄せると見込まれており、自然環境に対してさらに負担をかけると住民は危惧している。

2018年のデータによれば、NZを訪れる観光客のうち、中国人は隣国のオーストラリア人に次ぐ第2位だった。

住民が恐れているのは水質汚染だけでなく、ベネチアやボラカイ島、バリ島などで見られたように、大量の観光客やキャンパーが、同国の代表的な名所を台無しにしてしまうことだ。

ベネチアでは過度な混雑のため。地元当局が観光客の入域を制限せざるを得なくなり、フィリピンで高い人気を誇るボラカイ島も、大量の観光客が押し寄せて「汚水溜め」になってしまったとして、昨年閉鎖された。

NZでもキャンパーの増加により一部の地域で問題が生じており、ゴミ処理もその1つだと、同国のビジネス・イノベーション・雇用省で観光政策担当マネジャーを務めるリチャード・デイビス氏は指摘する。

「環境そしてNZという国を守るために集団的な義務を負っており、国内や他国からのキャンパーを対象とした責任あるキャンプ手法に関する多くの啓発活動や、地元団体による問題対応を支援するためのインフラ投資を行っている」とデイビス氏は言う。

政府によるガバナンス放置と酪農・観光産業の増大によって、環境が犠牲になりつつある、とビクトリア大学ウェリントンのガバナンス政策研究所のマイク・ジョイ上級研究員は警鐘を鳴らす。

「これはオウンゴールだ。自業自得ということだ。この国にとって最大の付加価値は、美しく自然豊かなイメージであるにもかかわらず、そうしたイメージをまさに台無しにしつつある」とジョイ氏は言う。

政府は水質改善に注力していると主張する。2017年には、NZの主要河川や湖沼を2040年までに遊泳可能にするとの目標を設定しており、2030年までに8割達成という中間目標を掲げている。

政府の作業グループのメンバーでもあるジョイ氏は、強力な酪農、観光業界に政府が手をつけない限り、変化は起きないだろうと悲観する。「今のところ、偏った解釈や宣伝に投じられる資金がかなり増えている一方で、変革はほとんど進んでいない」

(翻訳:エァクレーレン)

ロイター
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