ニュース速報

中期防総額、27兆円程度で最終調整 過去最大更新=関係筋

2018年12月11日(火)17時56分

[東京 11日 ロイター] - 政府は今月中にまとめる次期中期防衛力整備計画(中期防)の総額について、2019年度からの5年間で27兆円程度とする方向で最終調整に入った。最新鋭ステルス戦闘機・F35の大量追加購入などで2期連続の増加となり、過去最大規模となる見込み。前期比では2兆円程度と大幅な増額となる。関係筋が11日明らかにした。

政府は11日、今月中にまとめる新たな防衛大綱と中期防の骨子案を与党ワーキング・チーム(座長:小野寺五典前防衛相)などに示した。だが、総額について同案には明記がなく、政府・与党内で最終調整を進めていく。

<いずも空母化、与党が条件付きで大筋了承>

大幅な増額となる一因は、F35の大量調達だ。政府は、すでに垂直着陸に対応しないF35Aを42機導入する方針を決めているが、現在保有する99機のF15型戦闘機を順次、F35AないしBに置き換える方針を決め、与党側も了承済み。

このうち最大40機は垂直着陸が可能なF35B型とする方針で、大綱・中期防の骨子案にも、護衛艦「いずも」を空母として利用できる改修や、F35Bを念頭に置いた垂直着陸機の活用が盛り込まれた。

これに対して、空母の保有は専守防衛の従来方針と食い違うとの意見が公明党など与党側から根強く、与党ワーキングチームは11日、いずも改修案について、同計画が専守防衛の方針と違わないことを付属文書で示す条件で大筋了承した。政府側は13日にも準備する方向だ。

<F2後継機、日本主導で開発>

中期防骨子案にはF2戦闘機の後継機の開発について、「国際協力を視野に、わが国主導の開発に早期に着手」との文言も盛り込まれた。政府・与党側は「F35を大量購入することで、次期戦闘機の国内主導開発で米国側の理解を得たい」(幹部)と説明している。

<超音速誘導弾など開発━島しょ部防衛>

戦闘が従来の「陸・海・空」といった領域から、宇宙・サイバー空間も含む形に変容しつつある現実を踏まえ、宇宙領域専門部隊の新編や宇宙状況監視システムの整備、宇宙を専門とする職種の新設などを進める。

宇宙・サイバーなど「新たな領域に係る機能を一元的に運用する組織、大臣の指揮命令を適切に執行するための平素からの統合的な体制のあり方を検討する」。

島しょ部の防衛を念頭に、迎撃が難しい超音速誘導弾の研究開発も進める。早期警戒機E-2Dに対する共同交戦能力の付与も推進。各分野への人工知能(AI)の導入や無人航空機(ドローン)の整備、水中ドローンの研究開発も進める。

陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア(陸上イージス)」の整備も盛り込んだ。

少子高齢化による自衛隊の担い手不足に対処するため、宿舎の整備や老朽化した備品の更新など生活・勤務環境の改善や、給与面の改善を含む処遇の向上などを進める。

国内防衛産業への競争原理の導入や、契約制度の見直しを進めコスト削減も進める。

*内容を追加しました。

(竹本能文 編集:田巻一彦)

ロイター
Copyright (C) 2018 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米大統領とイスラエル首相、ガザ計画の次の段階を協議

ワールド

中国軍、30日に台湾周辺で実弾射撃訓練 戦闘即応態

ビジネス

日経平均は反落で寄り付く、主力株の一角軟調

ワールド

トランプ氏、ウクライナ和平の進展期待 ゼレンスキー
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と考える人が知らない事実
  • 3
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それでも株価が下がらない理由と、1月に強い秘密
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 6
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 7
    「アニメである必要があった...」映画『この世界の片…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    2026年、トランプは最大の政治的試練に直面する
  • 10
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中