<元英陸軍兵カール・ブッシュビーの壮大な旅は「21世紀のオデュッセイア」に例えられた>

[ロンドン発]28年の歳月をかけ世界約5万キロメートルを踏破した元英陸軍第3空挺大隊のカール・ブッシュビー氏(57)が11月2日、「ビースト」と名付けたカートを押して故郷の英イングランド北東部ハルに戻って来た。ポケットに残されたのはわずか40〜50ポンドだ。

【動画】世界一周の冒険を終え家族と再会したカール・ブッシュビーと、彼の旅の軌跡

庭の入り口で「どこに行っていたの」と母アンジェラに抱きしめられたカールはこう応じた。「どこに行っていたかだって。28年経ってここにいるよ」。「動力付きの交通機関を使わず前進する」「最後まで祖国の土は踏まない」と自らに課した男がついに旅を終えた。

読み書きに困難を伴うディスレクシアを抱えたカールは幼少期に学校でいじめや屈辱的な扱いを受け、自分は役立たずだと思い込んでいた。アンジェラは帰郷を前にした手紙で「昔のお前は自分を役立たずだと思っていた。でも、そうではないと証明した」と励ました。

16歳で軍に入隊したものの、離婚によって妻子と離別。妻が一人息子のアダムを連れて北アイルランド・ベルファストへ転居し、軍の北アイルランド紛争期の行動制限のため息子に会いに行けず、住所すら把握できなくなった。

査証の失効・発給拒否や世界金融危機によるスポンサー撤退

ロンドンからニューヨークまで歩けるだろうかという父の疑問をきっかけに世界地図を広げた。南米最南端から北米を縦断、ベーリング海峡を越えアジアに入り、欧州を経由してハルに帰るルートを1本の線で結んだ。

1998年11月、チリ南端のプンタ・アレーナスを出発したカールは当初、12年での達成を見込んでいた。

コロンビアとパナマ国境の密林地帯ダリエン地峡を抜けた際は左翼ゲリラと麻薬組織を避けるため浮浪者に成りすまし、パナマでは不法入国容疑で18日間勾留された。

カールは「ダリエン地峡は本当に特別な場所だ。少年の冒険の夢そのもの、本物のインディ・ジョーンズの世界だった。そして怖かった」と振り返っている。

2006年3月にはフランス人冒険家とともに凍結したベーリング海峡を徒歩で横断。14日間かけてアラスカからシベリアに渡るとロシア国境警備隊に拘束された。当時のジョン・プレスコット英副首相らの仲介で追放は免れたと報じられた。

しかし査証の失効・発給拒否や08年の世界金融危機によるスポンサー撤退で冒険の中断を強いられた。

この壮大な旅は「21世紀のオデュッセイア」
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