※“A picture is worth a thousand words.”――1枚の写真には千の言葉の価値がある。世界の今を鋭く捉えるドキュメンタリーから、感性を刺激する芸術的なアプローチまで。連載「Picture Power “世界を物語る”写真の力」からお届けします。
スペイン南部の港町アルメリアには、宇宙からでも観察できるほど巨大な、白い氷河のような一帯が広がっている。ニューヨーク・マンハッタンの5倍以上、約3万ヘクタールを覆い尽くす世界最大のビニールハウス群だ。人々はここを「プラスチックの海」と呼ぶ。
始まりは1963年、乾燥した日当たりのいい半島で、農家が風から作物を守るためにビニールハウスを使い始めたのがきっかけだ。その後、パイプから水と肥料を点滴のように落とす点滴や遺伝子研究といった技術革新も相まって、今やトマトやズッキーニ、ナスなど年間350万トンもの野菜を欧州各地に一年中供給している。
域内には職業訓練校や研究機関も集結し、気候変動に適応した作物の開発なども進む。しかし、華やかな「欧州の菜園」には裏側もある。10万人に上る労働者の多くはアフリカ出身者で、低賃金で不安定な生活環境に置かれている。
このプラスチックの海は、真の豊かさを育む新たな農業の形を築くことができるのだろうか。
Photographs by Alessandro Gandolfi
撮影:アレッサンドロ・ガンドルフィ 1970年、イタリア・パルマ生まれ。哲学とジャーナリズムを学び、イタリアを代表する日刊紙レプブリカに記者として勤務した後、フォトジャーナリストに転じる。独シュピーゲル誌、仏ルモンド紙など欧州の主要メディアや、写真祭、展覧会で作品を発表している
