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「お父さんの部屋から異臭がする」...検視官が見た「他人事じゃない」不審死の現場

2026年1月12日(月)17時05分
印南敦史 (作家、書評家)

事件性のない変死事案でも、検視終了まで3時間


 検視は、答えの見えない謎から始まります。私の検視官生活は、私なりに五感を駆使して現場や遺体を観察し、違和感を覚えたことやわからないことは正直に周りに教えを請いつつ、目の前の遺体のさまざまな謎を解くことから始まりました。(42ページより)

この文章からも伺えるように、著者のベースにあるのは公務員としての責任感である。前触れもなく検視官になれと言われたら、慌てたり拒否反応を示したりしても無理はないが、常に冷静さを保っているのだ。読み進めながら、そのことを何度か感じた。

遺体取扱数は季節や天気、曜日、時間帯などによって増減があり、当然のことながら予測のつくものでもない。著者の場合は「一当務平均6件くらいの取り扱いで、最多では17件」だったという。

事件性のない変死事案でも、現場に警察官が出向いてから検視終了まで少なくとも3時間。担当区域で10件を超えてくると同時並行で検視をすることになるので、単純計算でも10件×3時間=約30時間かかるわけである。

しかも(当たり前かもしれないが)本書で紹介されている事案には、驚かされるようなものが少なくない。


 晩秋のある夜0時過ぎ、不審点の多い通報です。
 50歳代男性が自宅で亡くなっており、発見した妻と娘の3人で同居しているとのこと。娘が夜中に「お父さんの部屋から異臭がする」と母親(死者の妻)に相談して、2人で死者の発見に至ったようです。気温が下がりつつある時期に異臭がするほど遺体が腐っていたというのです。(76ページより)

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