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中東情勢

アメリカが中東にこだわる理由は石油だけじゃない? 知られざる「4つ理由」とは

2025年11月10日(月)16時00分
アルモーメン・アブドーラ(東海大学国際学部教授)

3. 世界の生命線:戦略的海上交通路(シーレーン)の支配

アメリカの安全保障上の核となる目標の一つが、世界の海上交通における要衝(チョークポイント)を支配することです。

そして、その多くが中東に集中しています。中東には以下3つのような要衝がありますが、これらの戦略的重要性は計り知れません。


(1) ホルムズ海峡: 世界の天然ガス輸出の5分の1、石油輸出の4分の1が通過する。

(2) バブ・エル・マンデブ海峡、スエズ運河: 世界の海上貿易の12%を担う。ヨーロッパとインド洋を結ぶ唯一のルート。

(3)トルコ海峡(ボスポラス海峡、ダーダネルス海峡): ロシアが地中海へアクセスするための唯一の出口。ロシアの海上原油輸出の約38%がここを通過するため、ロシア経済の生命線となっている。

これらの海路を支配することが、世界貿易の流れをコントロールする絶大な力をアメリカに与えます。そして、この支配を確実なものにするために、アメリカはこの地域に数十の軍事基地と、米海軍の第5艦隊および第6艦隊を展開しているのです。

4. 最後の戦場:台頭する中国・ロシアとの覇権争い

アメリカの介入は、最大のライバルである中国とロシアが、資源豊かで戦略的に重要な中東を支配するのを防ぐという目的によっても突き動かされています。

これはゼロサムゲームです。もしアメリカが撤退すれば、その力の空白をライバルが埋め、アメリカの超大国としての地位に終止符が打たれることを意味します。

この考え方は、イスラエルのあるユダヤ人入植者の格言として引用される言葉に基づくものですが、「もし私が君の家を盗まなければ、他の誰かが盗むだろう」という痛烈な言葉に集約されています。

ロシアや中国のアプローチ方法はバラバラです。ロシアはシリアへの軍事介入に見られるような「ハードパワー」を行使します。一方、中国は貿易や「一帯一路」構想のような経済的影響力、すなわち「ソフトパワー」を駆使しています。

すでに中国はほとんどのアラブ諸国にとって最大の貿易相手国となっています。2023年に中国の仲介によって実現したサウジアラビアとイランの国交正常化は、この地域における力学の変化とアメリカの影響力の低下を象徴する出来事でした。

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