最新記事
日韓関係

日米韓の三角関係を動かすか 李在明大統領「訪日先行」の戦略

2025年9月4日(木)18時25分
佐々木和義

日米と中国の間で揺れてきた韓国

現在、韓国は外交面で親密な国がなく、李在明にも親しい外国首脳はいない。その背景には、ここ10年余り韓国外交が日米と中国の間で揺れてきた経緯がある。2013年に発足した朴槿恵政権は米中二股外交を展開した。韓国の環太平洋経済連携協定(TPP)参加を求めるオバマ米大統領と、一帯一路への参加を求める習近平中国国家主席がこの二股外交を容認した。訪韓中国人旅行者の急増と爆買いが話題となり、対中貿易も過去最高を記録した。そのため「中国があれば日韓関係は不要」との声も出て、2015年には日韓通貨スワップが更新されずに終了した。

続く文在寅政権は親中・親北外交を推進。経済制裁で疲弊していた北朝鮮は韓国からの経済支援や米朝会談による制裁緩和に期待し、米国との関係が悪化していた中国も米朝首脳会談を仲介した文に期待を寄せた。しかし、米朝会談は成果なく、北朝鮮は文政権との対話を拒否。米国でバイデン政権が誕生すると、習近平も文在寅政権に見切りをつけた。

中国・武漢発の新型コロナウイルスのパンデミックや訪韓中国人のマナー問題などで、韓国内の嫌中感情が悪化するなか、尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権が発足。日米との関係を重視する外交方針を打ち出し、事実上中国と距離を鮮明にした。対中貿易も赤字に転落し、親中外交はメリットがなく、国民の支持も得られなくなった。

李在明政権に残された選択肢は日米との連携だが、トランプとの関係構築は容易ではない。そこで石破との関係強化を図ったとみられる。

同盟国にも強硬姿勢を見せるトランプだが、日本には比較的好意的だ。日韓国交正常化60周年を記念する交流行事も行われ、日韓協調は米韓関係の構築にも追い風となる可能性がある。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

潜水艦の次世代動力、原子力含め「あらゆる選択肢排除

ビジネス

中国債券市場で外国人の比率低下、保有5カ月連続減 

ワールド

台湾、米国との軍事協力を段階的拡大へ 相互訪問・演

ワールド

ロシアがキーウに夜間爆撃、6人死亡 冬控え全土でエ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    TWICEがデビュー10周年 新作で再認識する揺るぎない…
  • 5
    米軍、B-1B爆撃機4機を日本に展開──中国・ロシア・北…
  • 6
    【クイズ】12名が死亡...世界で「最も死者数が多い」…
  • 7
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 8
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 9
    汚物をまき散らすトランプに『トップガン』のミュー…
  • 10
    「認知のゆがみ」とは何なのか...あなたはどのタイプ…
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 5
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 6
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 7
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 8
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 9
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に…
  • 10
    TWICEがデビュー10周年 新作で再認識する揺るぎない…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中