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荒川河畔の「原住民」(32)

中国人ジャーナリストが日本のホームレスを3年間取材して知った10の命題

2025年6月20日(金)20時05分
文・写真:趙海成

一部の日本人は、ホームレスを「怠け者で、税金によって救済され、社会環境の妨げとなる存在」だと見なしている。そして多くの日本人は、ホームレスに対して多少の理解と同情を持ちながらも、彼らの存在を歓迎はしていないと思う。

しかし私は3年間の密着取材を通じて、ホームレスが長期にわたって存在してきたことには、価値と意義があるのだという結論に至った。

確かに、ホームレスの人数は年々減少している。厚生労働省が集計した「ホームレスの実態に関する全国調査」では、第1回の2003年がピークで2万5296人であったが、22年後の2025年には10分の1にまで減少している。

しかし、完全に消え去ることにはならないと思う。

いつの時代でも、どの国にも、ホームレスは存在する。異なるのは人数と社会の関心、配慮の度合いだけである。

ホームレスの友人たちと撮った写真

ホームレスの友人たちと撮った写真(下段の3枚はそれぞれ右が筆者)

逃げ場やライフスタイルの選択肢としてのホームレス

ホームレスという存在は、現代社会においてどのような価値と意義を持っているのか。10の命題に分けて考察したいと思う。

■命題1:ホームレスは命の延長線上にある最後の選択肢である

日本人は「他人に迷惑をかけないこと」を美徳とし、非常に強いこだわりを持っている。そのため、困難に直面しても他者に助けを求めることをためらい、時には自ら命を絶ってしまう人もいる。

しかし、命を終わらせることと他者に助けを求めることの間に、本当に選択肢はないのだろうか。

ホームレスになるという決断は、絶望の淵に立つ人々にとって、生き続けるための希望に向けて新たな「緩衝期間」を提供するものでもあるのだ。

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