最新記事
ジェンダー

「女子のくせに。」悔しい気持ちを原動力に...澤穂希と「誰もが個性を発揮できる未来」を考える

2025年2月25日(火)11時30分
※JICAトピックスより転載
澤穂希

2011年FIFA女子W杯で主将として日本を優勝に導いた澤さん(2011年7月17日、ドイツ・フランクフルト) Carl Sandin-Bildbyrån via REUTERS

<地震や津波など自然災害リスクに性別は本来関係ないはずだが、女性の死亡率が高いケースが多いという。世界と日本のジェンダー不平等、次の世代のために何ができるかを、元サッカー女子日本代表の澤穂希さんと考える>

3月8日は国連が定めた「国際女性デー」。1975年の制定から50年が経ち、世界の女性を取り巻く環境は少しずつ改善しながらも、いまだ課題が多く残ります。元サッカー女子日本代表の澤穂希さんとJICA人間開発部の亀井温子部長が、ジェンダー平等の実現と「誰もが生きやすい未来」への想いについて語りました。

「女子だから」サッカークラブ入団を断られた

JICA人間開発部 亀井温子部長(以下、亀井) 澤さんといえば15歳で日本女子サッカーの代表に選ばれ、ワールドカップ(W杯)ドイツ大会での優勝とMVP受賞、ロンドンオリンピックでは銀メダルと、日本のサッカーの歴史を切り開いてきた方です。これまで女性ゆえに苦労されたこともあったのではないでしょうか。

澤穂希さん(以下、澤) 私は6歳からサッカーを始めましたが、入団を希望したクラブが「サッカー"少年団"」だったので、「女子入団は前例がない」と一度は断られたんです。私の母が「それなら穂希で歴史を変えてください」と直談判してくれて、入団することができました。でも、小学6年生のときの「全国少年サッカー大会」には男子しか出場できずに悔しい思いをしました。男子から「女子がサッカーやってるんじゃねえよ」と言われたこともありますし、「どうして女というだけでダメなんだろう」「男に生まれればよかったのかな」と思ったこともありました。

澤穂希

澤 穂希(さわ・ほまれ) 元サッカー日本女子代表。15歳で日本代表入りし、ワールドカップ(W杯)に6度、オリンピックに4度出場。2011年FIFA女子W杯ドイツ大会での優勝に貢献し、得点王・MVP。2012年ロンドン五輪で日本女子サッカー史上初の五輪銀メダル獲得。日本女子代表史上、出場数・ゴール数1位など輝かしい成績を誇り、日本女子サッカー界を切り開いてきた。現在は、一児の母として子育てしながらスポーツの普及のための活動を行っている

小学生時代の澤穂希

小学3年生ごろの澤さん

亀井 今では女子がサッカーをすることも珍しくありませんが、パイオニアである澤さん自身は女性というだけで悔しい思いをしてきたんですね。

 そうですね。せっかくサッカーという好きなものに出会えたのに、どうして性別だけで判断されるんだろうと。でも、私は基本的にポジティブなので、その悔しさがサッカーを続ける原動力になりました。

亀井 暴言を吐いた男子よりも、澤さんのほうがサッカーが上手だったのでは。

 いえいえ、そうは思いませんでしたが、実力勝負の世界で結果を出そうと思いました。仕事も「男性だから・女性だからこの仕事に就かなくてはいけない」のではなく、男性でも女性でもその仕事をできる人がその職に就けばいいですよね。性別のような条件で分けられたくありません。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イスラエル、ガザで40カ所空爆 少なくとも30人死

ワールド

米がウクライナ和平仲介断念も 国務長官指摘 数日で

ワールド

米側の要請あれば、加藤財務相が為替協議するだろう=

ワールド

次回関税協議で具体的前進得られるよう調整加速を指示
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 2
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判もなく中米の監禁センターに送られ、間違いとわかっても帰還は望めない
  • 3
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はどこ? ついに首位交代!
  • 4
    米経済への悪影響も大きい「トランプ関税」...なぜ、…
  • 5
    紅茶をこよなく愛するイギリス人の僕がティーバッグ…
  • 6
    トランプ関税 90日後の世界──不透明な中でも見えてき…
  • 7
    ノーベル賞作家のハン・ガン氏が3回読んだ美学者の…
  • 8
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 9
    今のアメリカは「文革期の中国」と同じ...中国人すら…
  • 10
    トランプが「核保有国」北朝鮮に超音速爆撃機B1Bを展…
  • 1
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止するための戦い...膨れ上がった「腐敗」の実態
  • 3
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 6
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 7
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気では…
  • 8
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 9
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができている…
  • 10
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 8
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中