最新記事
考古学

タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

Not Just Tatoos

2024年4月20日(土)12時08分
アリストス・ジョージャウ(本誌科学担当)
バイキング時代の遺跡から新発見

バイキングは8世紀後半から11世紀にかけてヨーロッパ各地に進出し、交易や略奪を行った ULLSTEIN BILD/GETTY IMAGES

<スウェーデンのゴットランド島で出土した人骨には、これまで知られていなかった「骨の人為的な変形」がはっきり残っていた>

バイキングの時代に行われていた永久的な身体改造という珍しい慣習に、研究者らが新たに魅力的な光を当てた。

■【写真】これまで知られていなかった「骨の人為的な変形」がはっきり残されているバイキング時代の人骨

今まで長いこと、バイキング時代のスカンディナビア半島における永久的な身体改造の形態は、タトゥーだけだと考えられてきた(この点を証明する具体例は見つかっていないのだが)。しかし最近になって、ほかの2つの例の証拠が発見された。

それは、ヤスリをかけて削った歯と、人為的に変形させた頭蓋骨だ。これらの例の大半は(頭蓋骨の例は全てが)、バルト海に浮かぶスウェーデンのゴットランド島で発見されている。

バイキング時代の社会で、これらの慣習はどのような意味を持っていたのか? その点については、まだ包括的な研究がない。独ハイタブ・バイキング博物館のマティアス・トプラクと独ミュンスター大学のルーカス・ケルクは、2月に学術誌「現代スウェーデン考古学」に発表した最新の研究で、この問題に挑んだ。

「バイキング時代のゴットランド島社会で、なぜこのような身体改造が行われたのか、それが何を意味していたのかをより深く理解するため、私たちは共同で事例研究を行うことにした」と、2人は本誌に語っている。

身体を使って伝える特定のメッセージ

バイキング時代とは、8世紀後半から11世紀にかけて、スカンディナビアの海洋民族であるバイキングがヨーロッパ全土および世界各地で略奪、植民地化、交易を行った時代を指す。

今回の最新の研究は、現在知られているバイキング時代の永久的な身体改造の形態を説明し、考えられる意味合いについて論じた。さらに、人間はどのように自分の体を使って特定のメッセージ(例えば、社会的、宗教的、文化的集団への帰属)を伝えられるかを考察した。

「現代的な例で言えば、タトゥーを入れるのは、それによって自分がどう見られたいかを示す行為だ。自分が手出し無用なタフガイであることを伝えるためかもしれないし、あるいは特定の組織のメンバーだけに分かる隠された意味があるのかもしれない」と、トプラクとケルクは言う。

この研究で2人は、バイキング時代の社会における身体改造の2つの形態を紹介した。1つは前歯を横切る溝を掘る。もう1つは、頭蓋骨を人為的に引き伸ばすというものだ。

newsweekjp_20240418025707.jpg

身体改造を施したバイキング時代の人骨──人為的に変形させた頭蓋骨 ©SHM/JOHNNY KARLSSON CC BY 2.5 SE

「バイキング時代の永久的な身体改造となると、考古学者は大抵の場合、骨の構造(あるいは歯)を何らかの形で変化させる永久的な身体改造を扱う。タトゥーやピアス、傷痕、髪形やひげのスタイルといった身体改造は、(研究のために)再現することがほぼ不可能だ。現代の一般的なイメージでは、バイキングとタトゥーは完璧にマッチしているのだが」と、2人は言う。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イラン主要濃縮施設の遠心分離機、「深刻な損傷」の公

ワールド

欧州委、米の10%関税受け入れ報道を一蹴 現段階で

ワールド

G7、移民密輸対策で制裁検討 犯罪者標的=草案文書

ワールド

トランプ氏「ロシアのG7除外は誤り」、中国参加にも
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:コメ高騰の真犯人
特集:コメ高騰の真犯人
2025年6月24日号(6/17発売)

なぜ米価は突然上がり、これからどうなるのか? コメ高騰の原因と「犯人」を探る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロットが指摘する、墜落したインド航空機の問題点
  • 2
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 3
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 4
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 7
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    コメ高騰の犯人はJAや買い占めではなく...日本に根…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 5
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 6
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 7
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 8
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 9
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 10
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 7
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 8
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 9
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 10
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中