最新記事
潜水艦

最新の「四角い潜水艦」で中国がインド太平洋の覇者になる?

China's New Stealth Submarines Will Be Even Harder To Find, Analyst Says

2023年11月30日(木)19時43分
アーディル・ブラール
人民解放軍の元級潜水艦、039Cの旧型(2012年、寧波)

人民解放軍の元級潜水艦、039Cの旧型(2012年、寧波) REUTERS/U.S. Navy/Chief Mass Communication Specialist Sam Shavers

<水の抵抗は増えてもステルス性能向上を優先する角張った潜水艦のデザインは世界の開発トレンドになっている。なかでも実戦配備に最も近づいているのが中国の039C潜水艦だ>

中国海軍が開発を進めている元(ユアン)級潜水艦の最新タイプは、わずかな改良でステルス性能が格段に高まっていると、世界の海軍情報ニュースサイト「ネーバル・ニューズ」が先週伝えた。

<動画>四角い形状のセイルでステルス性能を高めた中国の潜水艦

 

039C型と呼ばれるこの潜水艦は通常動力式(ディーゼルと電気)で、アクティブソナー(音波発信探知機)に探知されにくい設計になっていると、公開情報を元に分析を行う潜水艦アナリストのH・I・サットンは述べている。サットンが注目するのは、セイル(浮上時に見張所となる潜水艦の上部構造。船の帆に似ているためセイルと呼ばれる)の形状で、浮上時に敵のレーダーに探知されにくいステルス設計になっているという。

中国の習近平(シー・チンピン)国家主席は今年7月末、軍の現代化のペースを一段と早めるよう指示した。これを受けて人民解放軍は海軍力の増強を急ピッチで進めており、最新型の元級潜水艦の開発もその一環だ。

国家主席、中国共産党総書記として異例の3期目に突入し、軍の最高司令官である共産党軍事委員会主席としても、今年11月で就任11年目を迎えた習は、今世紀半ばまでに人民解放軍を「世界クラス」の軍隊にすると誓い、軍備の全面的な現代化に発破をかけている。

四角がトレンド

新型潜水艦039Cの画像は2021年5月に初めてネット上に出回り、特徴的な角張った形状のセイルが注目された。敵の探知をまぬがれるこのセイルは、多くの艦船が行き交い、中国と西側陣営がにらみ合うインド太平洋で、中国に戦略的優位をもたらすとみられる。

サットンによると、このセイルの形状は世界的なトレンドで、スウェーデンが開発している次世代型潜水艦A26、いわゆるブレーキンゲ級潜水艦や、ドイツ海軍が建造中の212CDにも採用されている。

212CDはセイルだけでなく、外殻全体が角度をつけた形状になっていると、サットンは指摘する。それにより水の抵抗が大きくなるが、ドイツ海軍はそれを承知の上でステルス性の向上を優先したようだ。

ただし、こうしたセイル形状の潜水艦で既に試験運航を開始しているのは039Cだけだ。

039Cは中周波ソナーに探知されにくい設計になっていると、サットンは分析している。それにより敵は艦のタイプを識別しにくく、識別に手間取ったり、間違えたりする可能性がある。

サットンによると、形状に加え、敵の探知機が発する音波を反射しにくい表面加工のおかげで、039Cは魚雷に搭載されているような高周波ソナーにも探知されにくい。

米国防総省の最新の評価によると、039Cの本格的な配備は2020年代末になる見込みだ。

先端医療
手軽な早期発見を「常識」に──バイオベンチャーが10年越しで挑み続ける、がん検査革命とは
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:ドローン大量投入に活路、ロシアの攻勢に耐

ビジネス

米国株式市場=S&P・ナスダックほぼ変わらず、トラ

ワールド

トランプ氏、ニューズ・コープやWSJ記者らを提訴 

ビジネス

IMF、世界経済見通し下振れリスク優勢 貿易摩擦が
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは「ゆったり系」がトレンドに
  • 3
    「想像を絶する」現場から救出された164匹のシュナウザーたち
  • 4
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 5
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 6
    「二次制裁」措置により「ロシアと取引継続なら大打…
  • 7
    「どの面下げて...?」ディズニーランドで遊ぶバンス…
  • 8
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 9
    「異常な出生率...」先進国なのになぜ? イスラエル…
  • 10
    アフリカ出身のフランス人歌手「アヤ・ナカムラ」が…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 4
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 8
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 9
    ネグレクトされ再び施設へ戻された14歳のチワワ、最…
  • 10
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中