最新記事
ロシア

ワグネルを支配する「ロシア刑務所の掟」が戦場に染み出す...極めて厳格な身分制度の「4つの階級」とは?

A THIEVES' WORLD

2023年6月7日(水)15時10分
クリスタプス・アンドレイソンズ(ジャーナリスト、在ラトビア)

ロシアの刑務所内の身分制度は極めて厳格なものだ。そのルールは、ヒエラルキーの頂点に位置する受刑者たちの利害に沿うものであり、刑務所の管理者たちもそうした身分制度の存在が受刑者を統制する上で好都合だと考えている場合もある。

受刑者は、大まかに4つの階級に分類される。カースト制度さながらに、上の階級に昇格することは不可能に等しいが、下の階級に降格することは至って容易だ。下の階級に転落することへの恐怖は、刑務所内のあらゆる人間関係に影響を及ぼす。その4つの階級は、それぞれ「盗賊」「男」「雄ヤギ」「雄鶏」という隠語で呼ばれている。

「盗賊」は、刑務所の受刑者の中の権力者。職業的犯罪者や、犯罪者の世界の一員として常にそのルールの下で生きることを選んだ者たちだ。盗賊は人数こそ少ないが、刑務所内で絶大な権力と影響力を握っている。この階級には、マフィアの首領のような者も含まれる。

「男」は、大きなトラブルなしに刑期を終えたいと思っている者たち。刑務所の掟のことは知っていて、それを尊重する。刑務所の管理者側に協力することはしない。

「雄ヤギ」は、刑務所の管理者たちに協力するが、刑務所の暗黙の掟も尊重して行動する。刑務所内のヤミ商人として、たばこやドラッグやゲーム機などの品物を調達する者もこの階級に属する。

「雄鶏」階級の過酷な現実

最下層のカーストが「雄鶏」だ。受刑者の誰もがこの階級への降格に怯えている。ここに転落するのは簡単だが、いったん転落すると二度とはい上がることはできない。

雄鶏たちは、刑務所内で誰もが嫌がる仕事を押し付けられる。便器の掃除や、他の受刑者の下着の洗濯などをさせられるほか、しばしば性奴隷として扱われるのだ。

この階級は、刑務所における不可触民のような存在だ。他の階級の受刑者は、性行為以外で雄鶏と接触すべきではないとされている。実際にその体に触れるだけでなく、この者たちが触った物に触れることも原則として禁忌とされている。他の階級の受刑者がこの禁忌を犯した瞬間に、その人物も雄鶏階級に転落する。雄鶏が刑務所で他の房に移動するときは、自分の身分を宣言しなくてはならない。

上位の受刑者と雄鶏の間で認められている「付き合い」は、性的サービスの売買にレイプ、そして暴力に限られる。暴力は蹴るか道具を使うかで、殴るのは触れることになるのでタブーだ。雄鶏の立場は実に悲惨で、自殺に追い込まれる者も多い。盗賊たちにわざと触れて報復を図るケースもあるが、命懸けだ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:主人公を蘇生し結末改変も、ボリウッド「生

ワールド

焦点:日本が直面した複雑な力学、中東対応の実情 あ

ビジネス

中国PPI、3月は3年半ぶりプラス転換 中東紛争で

ビジネス

イタリア、今年と来年の成長率予想引き下げへ エネル
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプの大誤算
特集:トランプの大誤算
2026年4月14日号(4/ 7発売)

国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 2
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収される...潜水艦の重要ルートで一体何をしていた?
  • 3
    撃墜された米国機から財布やID回収か、イラン側が拡散──深まる謎
  • 4
    ポケモンで遊ぶと脳に「専用の領域」ができる? ポ…
  • 5
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで…
  • 6
    戸建てシフトで激変する住宅市場
  • 7
    高学力の男女で見ても、日本の男女の年収格差は世界…
  • 8
    目のやり場に困る...元アイスホッケー女性選手の「密…
  • 9
    「仕事ができる人」になる、ただ1つの条件...「頑張…
  • 10
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 3
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで代用した少女たちから10年、アジア初の普遍的支援へ
  • 4
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始め…
  • 5
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 6
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐ…
  • 7
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 8
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収され…
  • 9
    ポケモンで遊ぶと脳に「専用の領域」ができる? ポ…
  • 10
    撃墜された米国機から財布やID回収か、イラン側が拡…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 6
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中