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ウクライナ情勢

国際社会から同情されるウクライナも、一歩間違えれば反感を買う──ポーランド着弾が問う世界大戦リスク

Looming Escalation Risks

2022年11月22日(火)16時34分
スティーブン・ウォルト(ハーバード大学ベルファーセンター国際関係論教授)


私たちがウクライナの人々に心を寄せ、物質的支援を行うのは当然だ。だが、これまでさんざん世界の諸問題を独裁者の邪悪な性質のせいにしてきたアメリカは、プーチンとその取り巻きのメンタリティーをなかなか理解できない。

現実を認めることは、プーチンの命令を擁護することでも、ロシア軍のウクライナにおける蛮行を正当化することでもない。ロシアはふざけ半分で戦争を始めたわけではないし、簡単には敗北を受け入れない──その事実をしっかりと受け止めるべきだ。

戦争が続く限り、より危険な偶発的出来事が起きるリスクも、意図的な決断によるエスカレートのリスクもなくならない。今後起きる偶発的出来事が適切に解釈されるとは限らないし、劣勢にある側が思い切った賭けに出ないという保証もない。

もちろん交渉で全てが解決するわけではない。今のところ戦況はウクライナに有利だが、ロシアがウクライナの要求を全てのむことはおろか、譲歩することも望めない。

たとえ両者が交渉に乗り気になったとしても、合意形成はとてつもなく困難だ。ロシアとウクライナの間には憎悪と不信が渦巻いている。捕虜や拉致された市民の送還、ウクライナへの復興支援、戦争犯罪の追及、制裁の解除など、取り決めることは山ほどある。

それでも今回の不幸な出来事が幸いに転じる可能性はある。これを契機に戦争が長引けばエスカレートの危険性が高まり、エスカレートすれば壊滅的な結果になると人々が気付くなら......。

気付かなければ、こうした出来事はまた起きるだろう。そのときどうなるかは神のみぞ知るだ。

From Foreign Policy Magazine

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