最新記事

ロシア政治

ロシアエリートがプーチン暗殺を計画──ウクライナ情報

Russia's Elite Want Putin Out, Successor in Mind: Ukraine Intel Chief

2022年3月22日(火)15時55分
トーマス・キカ

ウクライナ侵攻で失敗したプーチンを追い落とそうとする動きが(写真は2020年、手前は「後継」と目されるFSBのボルトニコフ長官)「Sputnik/Aleksey Nikolskyi/Kremlin/REUTERS

<ウクライナ侵攻に失敗し、多くの犠牲者を出し、ロシアの名誉を貶めたプーチン政権を打倒するチャンスを狙うロシアエリートたち。後継候補も既に決まっているという>

ロシアのエリート層はウラジーミル・プーチン大統領の「排除」を計画しており、後継者候補も既に考えてある――ウクライナの情報当局がこう伝えた。

ウクライナ国防省の情報総局長は3月20日、同省のフェイスブック公式ページにこのセンセーショナルな主張を投稿した。その書き出しはこうだ。「毒殺、突然死、事故――ロシアのエリート層がプーチン排除の可能性を模索している」


投稿文はさらに、「ロシア政財界のエリート層の中に、反プーチンを掲げる、影響力のある人々のグループが形成されている」と指摘する。「彼らが目指すのは、プーチンを権力の座から排除すること。そしてウクライナでの戦争が原因で失われた、西側諸国との経済的なつながりを回復させることだ」

またこの投稿によれば、このグループはプーチンの暗殺を目論んでおり、既に後継候補も決めている。ロシア連邦保安局(FSB)の長官で、ウクライナ侵攻に先立ってウクライナの世論や軍事力に関する分析を率いた、アレクサンドル・ボルトニコフだ。

ウクライナでの「誤算」でプーチンとFSBが対立か

国防省情報総局長は、プーチンとボルトニコフの関係が最近、悪化したと主張。ウクライナでの戦況が思うように進んでいないことについて、プーチンがFSBに責任をなすりつけていることが原因だという。ボルトニコフは現在、ロシアのエリート層と手を組んで、プーチン排除の方法を模索しているとされている。

「ボルトニコフは最近、プーチンからの寵愛を失った」と同局長は投稿文の中で主張する。「その公式の理由は、ウクライナ侵攻についての致命的な誤算だ。ウクライナの世論やウクライナ軍の能力の分析は、ボルトニコフ率いるFSBの担当だったからだ」

一連の文章は、ウクライナ政府の公的機関が投稿したものだが、その主張を裏づける具体的な証拠は、ほとんど示されていない。忘れてはならないのは、今回のように戦況が刻々と変化する紛争においては、どちらの当事者も、相手側が「不安定化しつつある」という主張を展開することで、得をする可能性があるということだ。

本誌は一連の疑惑について、在米ロシア大使館にコメントを求め、また投稿内容が正確かどうか複数の専門家にも意見を求めた。彼らから返答があり次第、最新の情報をお伝えする。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ベネズエラ野党指導者マチャド氏、ノーベル平和賞授賞

ワールド

チェコ、新首相にバビシュ氏 反EUのポピュリスト

ビジネス

米ファンドのエリオット、豊田織株5.01%保有 「

ワールド

タイ・カンボジア紛争、トランプ氏が停戦復活へ電話す
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【クイズ】アジアで唯一...「世界の観光都市ランキング」でトップ5に入ったのはどこ?
  • 3
    トランプの面目丸つぶれ...タイ・カンボジアで戦線拡大、そもそもの「停戦合意」の効果にも疑問符
  • 4
    中国の著名エコノミストが警告、過度の景気刺激が「…
  • 5
    死者は900人超、被災者は数百万人...アジア各地を襲…
  • 6
    「韓国のアマゾン」クーパン、国民の6割相当の大規模情…
  • 7
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 10
    イギリスは「監視」、日本は「記録」...防犯カメラの…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中