最新記事

労働

24時間営業問題で揺れるセブン-イレブン、既存店支援強化 AI店舗競争激化へ

2019年4月5日(金)11時47分

一律廃止には慎重

井阪社長は、見直しを求める声が挙がっている24時間営業について「立地、個店の状況に応じて柔軟かつきめ細やかに対応をしていく」と語った。

これまでの24時間営業を前提とした契約から、一歩踏み出した格好だ。ただ「24時間営業はセブン─イレブンのビジネスモデルの根幹をなしてきた」とも指摘。「何の検証もせずに拙速にこれを変えることは、加盟店の生活基盤を脅かす懸念に加え、顧客や取引先との信頼関係やブランドを毀損するリスクもある」と述べ、一律に取り止めることには慎重姿勢を示した。

この背景には、24時間営業を前提にサプライチェーンが組まれているという事情もある。

会見に同席したセブン─イレブン・ジャパンの永松文彦次期社長は「深夜の売上がない店は、状況に応じて対応する」と柔軟姿勢を示す一方で「深夜に顧客が来るような店は、24時間やらないという選択肢はやはりない」と強調した。

現在、全加盟店の0.5%に当たる96店のオーナーから時短営業の申し出があり、今後は時短営業の実験結果などを踏まえながら、オーナーと話し合いをしていく。

カギ握るAI店舗化

世耕弘成経済産業相はきょう、セブン─イレブン、ファミリーマート、ローソン、ミニストップなどコンビニ大手トップとの意見交換会を開催し、各社に加盟店との共存共栄に向けた「行動計画」を策定するよう要請する予定だ。

国が乗り出す事態にまで発展した今、コンビニ各社はもはやゼロ回答が許されない状況にある。

コンビニ各社は目先の人手不足に対応しながら、長い目で見た構造改革にも取り組まなければならない。そのカギを握るのが店舗のAI(人工知能)化だ。

ファミリーマートとパナソニックは2日、すべてのモノがインターネットにつながるIoT(インターネット・オブ・シングス)を活用した次世代型店舗を報道陣に公開した。画像分析や顔認証決済などの技術を活用することで、店舗の省力化やローコスト運営を目指す。

一方、昨年、小売業として初めて家電・IT(情報技術)の展示会「CEATEC(シーテック)ジャパン」に「未来型コンビニ」を出展したローソンは、専用アプリやセルフレジなどを活用して深夜時間帯を無人営業にする実験を今年7月から始める。

こうした動きに比べると、セブン─イレブンの取り組みは見劣りする感が否めない。店舗のAI化は人手不足を乗り切る切り札となる。同社も「今年度中にはセルフレジを全店に導入する計画を進めている」(永松次期社長)としているが、メーカーとの連携も含めて、開発をさらに加速させる必要がある。

(志田義寧 編集:田巻一彦)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 ISSUES 2026
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月30日/2026年1月6号(12月23日発売)は「ISSUES 2026」特集。トランプの黄昏/中国AIに限界/米なきアジア安全保障/核使用の現実味/米ドルの賞味期限/WHO’S NEXT…2026年の世界を読む恒例の人気特集です

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

首都圏マンション、11月発売戸数14.4%減 東京

ビジネス

中国、少額の延滞個人債務を信用記録から削除へ

ワールド

ブラジルの11月外国直接投資は予想上回る、中銀の通

ワールド

マレーシア外相、カンボジアとタイに停戦再開促す A
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 6
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 7
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 8
    米空軍、嘉手納基地からロシア極東と朝鮮半島に特殊…
  • 9
    【外国人材戦略】入国者の3分の2に帰国してもらい、…
  • 10
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 9
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 10
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中