最新記事

シリア情勢

シリアのクルド人をトルコが攻撃、アメリカはどちらに付くか

2018年1月22日(月)19時30分
トム・オコナー

「アメリカはトルコのアフリン攻撃に軍事的に対応することはないだろうが、北部マンビジへの攻撃は思いとどまらせようとするだろう。マンビジには米兵がいるにもかかわらず、(トルコの)エルドアン大統領は武力で奪取すると意向を示している。シリアに展開する米軍の最大の懸念は、トルコとYPGの対立がエスカレートすることだ。YPGはトルコから攻撃を受ければ大規模な報復をすると示唆している」と、軍事研究所の上級情報プランナー、ジェニファー・カファレラは本誌に語った。

クルド人勢力はロシアとも接近

「戦争がトルコ領内に拡大するのを避けるため、アメリカは緊張緩和に力を入れ、YPGをどこまで許容できるか定めようとするだろう。もしYPGがトルコ領内で攻撃を行えば、アメリカはシリアにおけるYPG部隊に対する支援のあり方と規模を見直さざるを得なくなるだろう」とカファレラは言う。

クルド人側にはアメリカから見捨てられるとの懸念が以前からあり、SDFはこの数カ月、ロシアとの関係を深めている。

シリアのクルド人はまた、シリア政府との交渉も開始している。東部デリゾールにあるクルド人支配下の油田と引き換えに、シリア北部における自治権拡大を手に入れようという算段だ。

ロシアもまた、トルコとシリア国内のクルド人との対立に巻き込まれている。トルコ国内の報道によれば、トルコの攻撃を見越したロシアの監視団員はアフリンから退避したという。だがロシア国営のRIAノーボスチ通信社によれば、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相はこれを否定している。

ラブロフは今回の攻撃のきっかけとなったアメリカの国境警備部隊計画をトルコ、イラン、シリアと足並みをそろえて非難しているが、一方でISISとの戦いでロシアはYPGと直接、協力もしており、クルド人組織をロシア南部ソチで開催予定の「シリア国民対話会議」に参加させたい考えだ。

(翻訳:村井裕美)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾の頼総統、中国軍事演習終了後にあらためて相互理

ビジネス

ロシア事業手掛ける欧州の銀行は多くのリスクに直面=

ビジネス

ECB、利下げの必要性でコンセンサス高まる=伊中銀

ビジネス

G7、ロシア凍結資産活用は首脳会議で判断 中国の過
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:スマホ・アプリ健康術
特集:スマホ・アプリ健康術
2024年5月28日号(5/21発売)

健康長寿のカギはスマホとスマートウォッチにあり。アプリで食事・運動・体調を管理する方法

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発」で吹き飛ばされる...ウクライナが動画を公開

  • 2

    「なぜ彼と結婚したか分かるでしょ?」...メーガン妃がのろけた「結婚の決め手」とは

  • 3

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を受け、炎上・爆発するロシア軍T-90M戦車...映像を公開

  • 4

    アウディーイウカ近郊の「地雷原」に突っ込んだロシ…

  • 5

    黒海沿岸、ロシアの大規模製油所から「火柱と黒煙」.…

  • 6

    なぜ? 大胆なマタニティルックを次々披露するヘイリ…

  • 7

    批判浴びる「女子バスケ界の新星」を激励...ケイトリ…

  • 8

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 9

    これ以上の「動員」は無理か...プーチン大統領、「現…

  • 10

    戦うウクライナという盾がなくなれば第三次大戦は目…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気を失った...家族が語ったハマスによる「拉致」被害

  • 3

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発」で吹き飛ばされる...ウクライナが動画を公開

  • 4

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 5

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 6

    ウクライナ悲願のF16がロシアの最新鋭機Su57と対決す…

  • 7

    黒海沿岸、ロシアの大規模製油所から「火柱と黒煙」.…

  • 8

    戦うウクライナという盾がなくなれば第三次大戦は目…

  • 9

    能登群発地震、発生トリガーは大雪? 米MITが解析結…

  • 10

    「天国にいちばん近い島」の暗黒史──なぜニューカレ…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中