最新記事
国境紛争

トランプの面目丸つぶれ...タイ・カンボジアで戦線拡大、そもそもの「停戦合意」の効果にも疑問符

Thai Airstrikes Hit Cambodia as Border Conflict Reignites

2025年12月9日(火)19時15分
ロバート・バーセル
シェルターに非難した人々

タイのブリーラム県で、シェルターに非難した人々 Prajoub Sukprom-shutterstock

<双方が戦闘開始の責任をなすりつけ合っており、事態収拾の見通しは立っていない>

タイとカンボジアが係争中の国境地帯付近での戦線を拡大させ、双方に死者が出ている。ドナルド・トランプ米大統領が仲介した停戦合意は事実上崩壊したという見方がある。

【動画】空爆されたカンボジア国境地帯の惨状

タイのアヌティン・チャーンウィラクル首相は自国が戦端を開いたことを否定しつつ、カンボジアとの交渉の余地を否定。トランプや他の仲介者が停戦合意を復活させる可能性もないとして、主権を守るための必要なあらゆる軍事的措置を取ると明言している。


戦闘は12月7日に国境沿いの銃撃戦から始まり、8日にタイ軍は空爆で応戦。タイとカンボジアは今回の戦闘の発端について、互いを非難している。

トランプは、両国間で死傷者を出した数日間の衝突を終わらせたとして、7月28日の停戦合意の仲介に功績があると主張し、カンボジア側はトランプをノーベル平和賞に推薦していた。今回の衝突は、それ以来最も深刻な停戦違反だ。

7月の合意でも歴史的な国境をめぐる対立は依然として未解決だった。紛争が再び激化するリスクは常にあったといえ、トランプ流の「ディール」の実効力を疑問視する声も上がっていた。

タイとカンボジアの両国はアメリカと中国との関係を良好に保っている。しかし、タイはNATO非加盟国のなかでの、アメリカの主要な同盟国である一方、カンボジアは中国と親密な関係にあり、中国に海軍基地の使用を認めている。

タイ陸軍の報道官によると、カンボジア軍は12月7日にタイのシーサケート県にある国境地帯で攻撃を開始し、翌日には全長800キロメートルに及ぶ国境地帯の複数の場所で戦闘が発生したという。タイ兵1名が死亡、8名が負傷した。

タイ陸軍は、「カンボジア軍の火力支援兵器による攻撃を抑止するため、タイは複数の地域における軍事目標に対して航空機による攻撃を開始した」と発表。カンボジア軍が多連装ロケットランチャーBM-21を使ってタイのブリーラム県の民間地域を攻撃したと非難した。

事件
ニューズウィーク日本版メンバーシップ登録
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ミネソタ州に兵士1500人派遣も、国防総省が準備命

ワールド

EUとメルコスルがFTAに署名、25年間にわたる交

ワールド

トランプ氏、各国に10億ドル拠出要求 新国際機関構

ワールド

米政権、ベネズエラ内相と接触 マドゥロ氏拘束前から
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
2026年1月20日号(1/14発売)

深夜の精密攻撃でマドゥロ大統領拘束に成功したトランプ米大統領の本当の狙いは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向」語る中、途方に暮れる個人旅行者たち
  • 2
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰に地政学リスク、その圧倒的な強みとは?
  • 3
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の船が明かす、古代の人々の「超技術」
  • 4
    世界最大の埋蔵量でも「儲からない」? 米石油大手が…
  • 5
    中国のインフラ建設にインドが反発、ヒマラヤ奥地で…
  • 6
    DNAが「全て」ではなかった...親の「後天的な特徴」…
  • 7
    鉛筆やフォークを持てない、1人でトイレにも行けない…
  • 8
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世…
  • 9
    シャーロット英王女、「カリスマ的な貫禄」を見せつ…
  • 10
    AIがついに人類に「牙をむいた」...中国系組織の「サ…
  • 1
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率が低い」のはどこ?
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 3
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世界一危険」な理由
  • 4
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 5
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試…
  • 6
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑につい…
  • 7
    母親が発見した「指先の謎の痣」が、1歳児の命を救っ…
  • 8
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 9
    「高額すぎる...」ポケモンとレゴのコラボ商品に広が…
  • 10
    中国が投稿したアメリカをラップで風刺するAI動画を…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中