最新記事

トランプ政権、核運用強化に転換か 通常兵器の攻撃に核で反撃も

2018年1月16日(火)09時40分

1月12日、トランプ米政権は新型核兵器を配備し、非核の大規模な攻撃に対して核兵器で反撃する余地を明白に確保する──。ハフィントンポストがこのほど伝えた最新の「核態勢見直し(NPR)」の素案が正式化された場合、こうした事態が起きるかもしれない。写真はトランプ大統領。ワシントンで撮影(2018年 ロイター/Joshua Roberts)

トランプ米政権は新型核兵器を配備し、非核の大規模な攻撃に対して核兵器で反撃する余地を明白に確保する──。ニュースサイトのハフィントンポストがこのほど伝えた最新の「核態勢見直し(NPR)」の素案が正式化された場合、こうした事態が起きるかもしれない。

軍縮問題の専門家からは、核戦争リスクを高めかねないとの懸念も出ている。

NPRは国防総省が策定しており、直近では2010年にオバマ前政権下で核兵器の役割を縮小させることを目指すと表明されていた。

しかし今回の素案は、世界で核兵器の重要性が低下していくというオバマ政権の想定は間違いだったことが証明されたと断言。「世界はより安全ではなく危険になっている」と強調した。

その上で核兵器を敵対勢力の抑止手段として積極的に受け入れ、老朽化しつつある米国の核兵器の近代化を支持している。

米議会予算局(CBO)の見積もりでは、核兵器の近代化と維持のために今後30年で要する費用は1兆2000億ドルを超える。それでも素案は、核による抑止が有効に機能すれば、戦争よりもコストがかからないと主張する。

国防総省は、NPRは最終的に国防長官と大統領の審査を経て承認されると説明しつつ、各種戦略や見直しにおいて決定前の段階の素案に関する議論はしないと述べた。

一方ある関係者はロイターに、報道された素案は本物だと語ったが、トランプ氏に提示されて承認を得る内容がそれと同じになるかどうかは明言しなかった。

あいまい戦略

素案はロシアと中国が核兵器の近代化を進め、北朝鮮による核を用いた挑発行為が周辺地域や世界の平和を脅かしていると指摘。これに対して米国は、すべての条約を順守しながらも水上艦艇から発射する核弾頭の巡航ミサイルの最新型を開発し、現在保有する潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の一部の弾頭について軽量化に向けた改良を行う方針を打ち出している。

さらに素案は、米国の核兵器を使った報復につながる「極限状態」に非核の重大な攻撃を含める可能性にも言及した。軍縮問題の専門家は、米国の電力網を壊滅させるような大規模サイバー攻撃などが、こうした極限状態とみなされてもおかしくないとの見方をしている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

岸田首相、「グローバルサウスと連携」 外遊の成果強

ビジネス

アングル:閑古鳥鳴く香港の商店、観光客減と本土への

ビジネス

アングル:中国減速、高級大手は内製化 岐路に立つイ

ワールド

米、原発燃料で「脱ロシア依存」 国内生産体制整備へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 3

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を受け、炎上・爆発するロシア軍T-90M戦車...映像を公開

  • 4

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 5

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 6

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 7

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 10

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 7

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中